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ダークエッジ妄想4 吉白2 【炎の殺人】


 ここ最近、昼間は閉ざされている墓室の扉の前には訪問者が居座っている。

「おい、遠山白右」

 微かに漂う匂いから、彼は煙草を吸っているのだろう。

「一本やろっか」
「いいや」
「吸ったことねぇの?」

 忌々しいレメクの構築した制限から、この扉は昼間は開くことができない。何かの拍子で入り込めたとしても、使い魔が勝手に処理をしてくれる。
 そんな扉の向こうから、彼…吉国紘一がどうやって煙草を放り込むというのか少しばかり興味はあったがすぐにそれは、風に吹き消される蝋燭の炎のように消えてしまう。不死族になるということは、同時に人間をやめることであり、己を一度殺すことだ。復活した自分自身には、以前ほどの感情の起伏も、またそれへの関心も薄れていた。

「どうだろうか…天野は与えなかった気がする」
「…確かにあのジイさん謎な感じだけど、そういうイケナイコトは教えてくれなさそうだよな…」

 煙草への関心。早いものはもう小学生やそこらで吸う者もいると、この男はぼやいていた。

「高城も吸わねぇな、そういえば…」

 ぽつんと扉の外の呟きも人より優れた五感で聞き取ることはできた。
 あの見た目から反して非行に走るタイプだとは思えない。妙な遵法意識すら漂う詰め襟の姿を思い出す。

「っぁち」

 キャリアになってからはライターいらずになったと自慢げに話していたのはいつかの夜のことだったが、火力はあるものの、やはりキャリアとしては未熟でコントロールに欠けるようだった。
 無意の炎を操るには、吉国自身の精神のむらがそれを難しくさせるのかもしれない。


 決定打を、与えられたら。
 この男の裡に眠る凶暴性をありのままに炎に点すことができたならば。
 どれだけのほむらが立つのだろうか。
 その光景はきっと美しいのかもしれないと、どこかで読んだ文章を頭の中でなぞってみたが、美しさとは何であるという価値観すら棄ててしまった自分には、ただ。
 他の王のイビル・ジーンが焼ける、その程度にしか思えないだろうとも、認識した。