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葉皆4 【自虐にしかならない嫉妬】


立ちこめた安定を促す筈の香りが役に立たない。
どれほど火をつけてもささくれ立った精神が落ち着かない。
境界線をぼやかすように宥めるラベンダーの匂いに敵わぬほどの苛立ちを抱えることは、ついぞなかったのに。
口にすると騒ぎ立てる喧しい奴がいるから、余計に舌打ちを自分のなかに押しこめなくてはならない。

不快。不快。不快。

「あ、皆守君またサボる気!?」
「うっせぇ」

きんと高い声を背に裾を翻す。
まるで逃げるように無様じゃないか。
そう歯がみするのに脚が急く。
アロマも役立たないなら境の見えない空と何の意志のない風が吹く屋上に行きたい。 


「こーたろ」

浄水タンクに凭れていたら、いきなり奴がひょっこりと顔を出した。

「サボり魔。もう5時間目終わったぞ」

いつでも笑みを絶やさない葉佩は隣にどっかりと座って、いい天気だなぁとまた口角をあげてみせる。

「てめぇな…」
「なんでしょ?」
「…もういい」
「何だよ」
「いいって言っただろ。構うな」
「気になるじゃん!もー!なんだよ甲太郎ー!」


 
誰にでもヘラヘラすんな、と言いたかったのを、抑えた。
理由はわかりきっている。だから苦々しい思いがアロマの効きを鈍くさせる。



自分以外を見る奴など見たくもない。