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識柚23


師匠と俺はたまに好みが食い違う。同じ濃い味付けでも俺は辛いほうが好きで、師匠のほうはこってりだけでいい。どうでもいいことばかりなんだけどね。
あ、師匠はトラは好きでも猫にはそんなに興味がないらしい。

「ツンケンしてる」

とか言って。犬のほうが喜んでるのがわかるから飼うなら犬だとか。俺はそう言って煙草をふかす師匠に脳内で猫耳つけて疚しい妄想をする程度に猫は好きだ。懐いたら猫もわかりやすい愛情を返してくれるだろ?ちょっとひねくれてるけど。
まあそれもどうでもいいことと言えばどうでもいい。

どうでもよくて、なんでもない、くだらないことを知って、積み重なるとつきあいも深くなったんだなあと思えてきて。いちいち「え、師匠イクラ嫌いなんですか。おいしいのに」なんて反応することもなくなっていく。
惰性じゃない、肌にはじむ何かを見つけるのは年をおうごとに難しくなる。空気の質がしっくりきて何時間黙っていたとしても厭きない相手なんて、生きているうちに何人出会えるだろう。
たまに師匠が俺のことを「弟子」とか「腐れ縁」じゃなく、「ツレ」と人に紹介する。ひそかに師匠にツレと呼ばれて喜ぶ俺がいる。
自分がつれてる人、という本来の意味に重なって、友人より親しい相手のことを言うツレに師匠からのなんともいえない愛情を感じるからだ。師匠の愛情の返し方は猫そのものだって、本人は気づいてないんだろうなあ。