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こたうじ26


暮れる時間が遅くなり、冬が遠ざかり春が来るのを空が告げている。
山の端にかかる薄衣の染めはまだ明るい。
ひとつ草を食む。
野草に甘みは全くなく、噛み潰す中で苦味が麻痺する。
それを吐き出し、肩口に塗りつけた。傍らでは忍刀が血にまみれ転がっている。
毒矢の掠った傷口を自ら抉った後を生々しく残している。
後で血を払っておかねばなるまい。人を斬った脂は刀を痛める。
宛布をし、きつく縛りあげて当座の治療を終える。
指先に痺れを感じ、四半刻は動かないほうが無難だろうと小太郎は体から力を抜く。
それで猛毒を完全にぬく小太郎の治癒力の高さには舌を巻く同業者が多い。
ふと見上げた淡い空に瞬く星が見えた。
星の動きは不動にみえてうつろぎ、それを読んで小太郎は思ったより遠くにまで来たことを知る。
夕暮れというには明るすぎる空のあわいで浮かぶ宵の星。

かの主は同じ星を見上げているだろうか。

痺れが頭にまわったか、小太郎はそんな感慨にふけった。