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こたうじ21


精を出していた書き物に手をとめる。
詰めていた氏政の息がついと漏れた。外は厳しい寒さのはずだが、火鉢のもたらすぬくもりで室内はほどよく暖まっている。
傍に控えている、稚い小姓は主の深夜までの勤めとぬくもりにうつらうつらと船を漕いでいた。それを怒るのも起こす気もなくなってしまった。
氏政のそばで気を遣うはずの小姓が居眠りをしているというのに、火鉢の炭はたっぷりと置かれ、氏政が筆を置くのを見計らったように火鉢の陰で小さな盆が添えられていた。

「ふむ」

強張った肩を自分で揉みつつ盆を引き寄せてみた。入れたての茶はほのかに湯気をあげ、どこから手に入れたのか小さく切った干し柿がちょんと盛られている。
あやつ、気の回し方が小姓より巧くなった。
おそらく今も天井裏か、氏政の気づかないような近くで姿を潜めているだろう。
氏政は人知れず皺の奥で笑ってから、茶と干し柿をつまんだ。あわい甘味がやんわりと頭を巡り、茶は熱すぎず冷たすぎずほどよく老爺の腹をあたためた。

「うまいぞ、小太郎」

小さく褒めると、どこかでカタリと音がした。小姓や侍従より有能になってしまいそうな忍びがたてた音やもしれなかった。