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こたうじ19


※超捏造。

その若駒を見かけたのは春の終わり、葉桜が映える頃。
小田原城の広大な厩舎の一番奥でひっそりと佇んでいた。

風魔忍の得意分野のひとつに騎馬による忍術がある。そこらにある駄馬を戦場駆ける戦道具に仕立て上げたり、馬との意思疎通を主より正確に行えたりする。
そういうわけで、自然小田原城内に詰めている風魔の忍びたちは「誰それの馬が毛艶が良い」やら「某の馬は気気性が荒い」と馬の話を雨夜の品定めのごとく交わしていた。当然のことながら、小太郎も馬への関心は高い。
一度見かけた奥州馬の見事な駆け様に、ああした馬が小田原にもあれば心強いなどと考えてもいた。
そうした中、小田原城の厩舎には氏政以下名だたる武将の馬たちが繋がれているので、小太郎も自然と、目がゆくのだった。
「逆旋毛」という名の、その名の通り旋毛が目立つ茶色の馬は厩舎の一番奥でひっそりと飼い葉を食んでいた。

「……」

小太郎はふらりとやってきた足で、逆旋毛に近づいた。二歳になったばかりの若い馬にしては、逆旋毛は変わった風体の小太郎を穏やかに見つめかえす。

「これは小太郎殿、逆旋毛にお目がいきましたか」

と、声をかけたのは逆旋毛より数頭手前につながれた馬の元にやってきた北条氏直、北条家の嫡子だった。
控えめで父の後ろで霞みがちの氏直だが、北条の名を背負って立つ気骨を充分に備えていると小太郎は見ている。厩番に任せておけばいい馬の様子もひとりで行っているあたり、気概の優しい青年なのだろう。

「逆旋毛は父の馬ですよ」
「!」

逆旋毛に手をのばしかけて、やめる。主の馬においそれと触ってはならない。
だが氏直は苦笑し、撫でるくらいはいいでしょうと許した。

「まだ若い馬なんですが、戦場を駆け回る前に父が腰をやってしまいましてね。遠乗りくらいしかここを出る機会がないのですよ」

それは惜しい、と小太郎は素直に思った。逆旋毛はむしろ氏直のようにこれから戦に出る若者にこそ良き相棒になるであろうに、と。

「まあ、おとなしい気性のようですから、このままでもいいかもしれませんね」

氏直はその後一通り馬の手入れを終えて、では、と丁寧に言い去っていった。

「……」

氏直はああいったものの、何頭もの馬がひしめく中、ゆったりと空間が取られた木枠の中で、逆旋毛はどこか物足りなげに見えた。
老齢の主と若き駒。
自分と、逆旋毛は少し似ていると長い顔を叩いてやりながら小太郎は感じる。逆旋毛が若駒にしては落ち着いた雰囲気を漂わせているのは、一重に主を案じて馬なりに思いを巡らせているせいだろう。
ともに走るか、主のために。
小太郎の内なる問いかけに逆旋毛は高らかに是と嘶いた。





書いてみたかった、馬と小太郎。「風魔は騎馬戦術に優れていた」と資料でよく見かけるので……馬に懐かれるこた、とか?
この後、こたの軍功が認められ氏直の後押しもあり逆旋毛がこたのところに来る、という話も考えてみたり。主から臣下にむけて色々物をあげる時代でもあったのだし、こういうのがあればいい!
言うまでもありませんが、馬もじっちゃんラブ。ライバルというよりは戦友な関係がいいなぁ。