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その他 慶次


「慶ちゃん、今日はあたしのところで寝るかい?」
「いやぁ、タケばーちゃんとこに泊まったら、又助じーちゃんに怒られちまうよ」

いくつになっても恋はするべきだし、お邪魔はしちゃいけない。
祭りの夜は騒がしく更けるが、明日も続く活力を残すため今日は早めにお開きだ。なんとなく、いつものように誰かの家を宿に借りる気が引けた。気まぐれな慶次の性分を笑って許してくれるほどに、みな優しい。

「夢吉…は、寝ちまったか」

ついには土の上にもいる気がなくなって、寺の一角の屋根瓦の上に乗った。そのころにはある意味薄情である意味健全な小猿はすやすやと眠っていた。

「俺だけ、寝そびれちまったか」

眠りは波に似ていて、浚われてしまえばたやすく夢路に旅立てる。なのに一度逆らうだけであっさりと取り残される。皆が眠りの海でたゆたうのに自分だけはっきり目が冴えて。

「さみしい、のかねぇ」

寝転がっても、星の位置が変わるまで見つめても眠りの波は誘いにやってこない。

「あー、どっかにいい人、いねえかな…」

せめて寝そびれてぐずる慶次につきあってくれる人がいたらいいのに。
結局、「夢吉が一匹、二匹」と続け、三万とんで四六匹まで数えたところで慶次の意識はぷつりと切れた。

もっともその頃は、一番鳥が鳴き出す直前だったが。