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こたうじ12 


「湯治にでも行きたいのう」
「!」

今日も甲斐甲斐しく肩をもんでいた小太郎が氏政の呟きに大いに反応した。

「季節の変わり目ともなるとあちこちが痛むわい、やはり年かのう」
「!」

小太郎はきゅっと唇を噛んだ。慰めも励ましも主は求めていないのだから、小太郎はただ揉む力をほんのすこし強めた。

「我が家に代々伝わる隠れ名湯にでも行くとするかの。小太郎もどうじゃ」
「!!」

その瞬間、小太郎は顔色は全く変わらないのに水揚げされた蛸のように奇怪きわまりない動きをした。ぐにょぐにょ身悶えているようにも見えるそれは徹底的に訓練を施された忍びの精一杯の動揺の表現でもあった。

「あの隠れ湯はよいぞ、体の節々の痛みをやわらげる効能がこれまた格別でのう、傷にも良く効くのじゃ」

氏政は背後の小太郎には気づかず遠い名湯に思いを馳せる。

「のう小太郎」
「!」
「おまえも忍ゆえ生傷が耐えぬであろ?北条家代々の名湯にともに浸かって鋭気を養うのじゃ」
「!!!!」

その瞬間小太郎は飛び上がり跳ね回り疾風のごとく主の前から辞した。うっかりそんな彼を見かけた配下の忍が「お頭になにが!?」っこれまた激しく動揺した。
兎や猿のごとき駆け回る小太郎が氏政に温泉で共湯をしようと誘われてまるで少女のように恥じらいつつも驚喜しているのだとは誰の目にもわからなかった。