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さゆき3


「佐助、狡いぞッ」

やけにご立腹だなあとのんびり構えていたら幸村にいきなり絡まれた。絡まれた、というか…一方的に詰られている、というか。
こりゃお館様関係かな、また目の前しか見えてないよとすごまれているのに佐助は心配になった。

「なぁにが」
「某の知らぬところでお館様の鍛錬のお相手をつとめたと聞いた!」
「あー…、そういえば」

なんかぼーっと木にぶらさがってたら突然あのでっかい斧を振るわれて、『弛んでおるぞ佐助ェエ!!』といきなり鍛錬とはとうていいえない殺し合いにもつれ込んだのは、つい先日。

「旦那、あれは鍛錬じゃないよ…お館様の暇つぶし」
「ぬぅ!それでもこの幸村、お相手仕りたかった!」

旦那にとっちゃお館様相手なら何でも喜んでやりそうだな。紙一重で庭石砕いた一撃を思い出す佐助はかすかにため息をついた。

「俺様繊細だからお館様みたいな豪快な相手の修練には向いてないよ、明日あたり頼んでみたら?」
「むう…」

少し頬をふくらませた幸村に、ははあと佐助は感づいた。自分から頼むのではなく、お館様から声をかけられたのが羨ましかったに違いない。あの気の良い猛虎なら若子の頼みを喜んで引き受けそうだが、それはそれ。

「じゃあ旦那、今から俺と稽古しよう」
「佐助と?そういえば、手あわせするのは久しぶりであるな」
「そーそー。旦那と俺様が組んでたらお館様も絶対乱入してくるからさ。声かけられるのを待つのも悪かないけど、乱入せずにはいられなくすればいいでしょ」
「…何かお館様を欺いているような気がするぞ」
「たーまにはいいでしょ。…お館様と手あわせ、したくない?」
「それはしたい!」
「そんじゃ、かかってらっしゃいよ。俺様も気張っていくぜ」

印を結んで分身共々構えをとると、闘いの気配に幸村の顔つきがかわる。

「応!」

射殺されそうな視線が佐助をとらえ、槍の一撃が繰り出されるその刹那、幸村のこういう顔をいつも見ているだろう甲斐の虎がちょっとばかり狡いと思った。



もちろん熱血の弟子と忍の闘いを聞いて虎が乱入しないわけがなく、幸村が半分喜びの声をあげながら虎に猛撃を繰り出したのはこのすぐ後のことだった。