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こたうじ10


帰る処はない。ないと思ってきた。

「おお小太郎、ご苦労じゃった」

最近めっきり冷え込んで、火鉢の炭を掻く氏政の姿は小田原城では見慣れた風景だった。
北条の紋がはいった火鉢にあたたまる氏政は孫の話をせがむが如く忍の報告を聞いた。聞くといっても主に配下が用意した文書と補足をつける者がいるので小太郎自身がなにか喋るわけではなかった。

「雪深くなれば北はしばらく静かじゃわい」

ひとまず安堵をもらす氏政は労いつつ小太郎以外を下がらせた。

「それで小太郎、此度は何を持ち帰ったのじゃ」

小太郎はこっくり頷いて隠しからばらばらと様々なものを落とした。いつのまにか小田原を出ぬ主にかわって小太郎が差し出すようになった「土産」である。
拒もうとすると、冷酷無比なはずのこの風魔小太郎ががっくり肩を落としてしまうので、以来素直に受け取るようにしている。

「先日のかき揚げもうまかったがの、今日の酒は良いのう」

さすが米所、とほろ酔いに赤く染まる顔の氏政はそれはそれはご機嫌で。
こくこく頷いて相伴に預かる忍はもっと幸せそうに見えた。