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みつのぶ2


まったく風のない静かな夜にどこからともなく虫の声。夏の夜には押し込められていた鬱憤をはらすように元気だ。

「ここのところ、退屈でしてね」

私も得物も喉が乾いてくるのですと光秀は囁いた。猟奇の性さえなければ玲瓏な彼から発せられるどんな言葉も睦言のように聞こえるだろうに。ただただ狂気をひそめた毒があたりにしたたる。

「ついついこうして忍んで参るくらいです、信長公」
「…くだらぬわ」
「あなたのほうは…これからがお楽しみといったところでしょうか」

鎧も具足もない夜着だけの信長は頼りない白い布地だけの守りとは思えぬ存在感を醸す。
天下人とはやはり常なるものとは違うのだ。

「そんなに暇なら草でも刈っておれ」
「おや、その草、悲鳴や血を私に捧げてくれますでしょうか」

光秀は濡れたような唇を自らの舌でなめずり蛇のごとき笑い声をあげた。

「この私に、耐え難いほどの苦痛を与えてくださるでしょうか。ねェ、信長公…?」

魔王と追従する蛇妖の一夜は空々しくも平穏に終わってゆく。