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こたうじ6


小田原城下は花に満ち人が笑いさざめくのが天守閣のさらに上の瓦からでも聞こえてくるようだった。
遠くを見据えることは希代の忍風魔小太郎にとって任務より他に趣味らしい趣味を持たない故にしているのだが今日は少し落ち着きがない。
あちこち雀のように瓦のうえを移動し、視線を定めない。虚空に身を任せるがごとく常と比べると大きな差がある。

「!」

ぴたと動きがとまるや否や小太郎の姿は掻き消えた。



「今日の土産は夕餉にでも食そうかの」

本日の氏政の予定は城下町から少し離れた田畑の視察だった。
ざる一山の野菜は領民の心尽くしの贈り物で、土の匂いも芳しい。
数人の供をつれた氏政の前にすとりと影が落ち、小太郎が現れた。

「風魔殿なにごとか」と供は騒いだが火急の用ではなさそうだ。
「見てみい小太郎、よき野菜じゃ。これこそご先祖様のご加護の賜ぞ」

小太郎はちらっと篭を一瞥してこっくり頷く。

「夕餉に野菜汁じゃ」

ほくほく嬉しそうな氏政を馬上にいただき、小太郎はそばにぴったりついた。

「畑の小僧に山の実ももろうてな、甘かったぞい」
「!?」

小太郎にしてみれば毒ではないか、刺客ではないかと疑うが氏政は朗らかなばかりだ。

「…」

次から氏政の外出には随行しようと小太郎は心密かに決めた。氏政は氏政で、あのように美味なら小太郎の土産にすればよかったかのうと全く見当違いなことを考えていた。