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ちか3


※ちかファミリー。色々と本で読んだネタが入っています。


信親が久方ぶりに家に戻ってみると母の菜々が侍女にまざってきゃあきゃあ騒いでいた。もともとは美濃の人である。しかも美濃一と歌われた美女は信親のような大きな息子を持っているようには全く見えない。

「母上、なにをなさっているんです?」
「あのね信親、ちょっと奥の倉のものを虫干しさせようとしていたら、わたくしのお義父様でおまえのお爺さまの国親様のお着物が出てきたのよ」
「お爺さま」

信親はその単語を転がしてみる。
国親は母が結婚する前にこの世を去っている。ただあの元親の父というだけあって、一度は衰えかけた長曾我部家を立て直した偉人であるということは知識で知っている。
だがそれ以上の祖父の顔を信親は知らない。
しかし、菜々が膝の上で並べているそれは、年月を経て古びているが明らかに女物である。
信親がはて、と首をかしげていると廊下をのしのし歩いて元親までもがやってきた。

「お、なんか懐かしいもん並べてやがる」
「あらお帰りなさい」
「こりゃあ、親父の潜入用の着物だぁな」
「潜入用っ!?」
「まぁ、そうですの?」
「ち、父上っ それってあの…」
「親父は俺の目から見ても変わっててなぁ…」

なぜか元親は遠い目をした。懐かしむ色よりはおもしろがるそれが強い。

「忍のように密偵めいたことまでやってたらしい。特に女装が得意で」
「じょっ、女装!?」
「まぁ。だからこのようなお着物が…」

菜々はあっさり納得したようだ。四国に嫁ぎに来た時点で肝っ玉が人並み以上なのはわかっているが、それよりなにより菜々は順応能力が非常に高かった。

「そのう、父上はお爺さまの…じょ、女装を見たことがあるんで…すか?」
「おうよ、よーくやってたぜ」

それに似合ってたと元親は自慢げに言う。

「一度やってハマったらしい」

ああ父上の柔軟さは元親一代のものじゃなく長曾我部家代々で受け継いできたのか。

「俺もよくさせられた」

信親は倒れそうになった。

「まぁ口惜しい。絵姿でも残して下されば良かったのに。それに言ってくだされば信親にもさせましたわよ?」
「ははぁ、そりゃあ惜しいことしたな、菜々」

そして夫婦の会話に泡を吹きそうにもなった。笑顔で堪えてみせたあたり、長曾我部家の長男の意地があった。