※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

ちか1 


「陸にあがる準備できたかー?」
「おうよー」
「買い出しにいく奴にちゃんと表作って渡せよ」
「おいおめえ字、汚ねえ!」
「うるせえ雰囲気でわかれよ!」

上陸直前は船のどこをみてもそわそわしている。陸に手が届きそうで届かない、そのもどかしさはいい意味で船員を刺激する。
長曾我部元親の長男・信親が甲板にあがってきた。この嫡男は皆から「若」と呼ばれている。
言うまでもなく信親も元親を敬愛し崇拝して親衛隊隊長の名誉を勝ち取っている。(隊長職をかけて『長曾我部軍内勝ち抜き百回勝負』の結果、決まったことなので誰も異存はない)

「おっ若も陸にあがりやすかい?」
「いや。…買い出しにいく奴は誰だ?」
「俺です俺ですっ」

元親を「やんちゃ坊主の田舎っぺ大将」と朗らかに評価した奥方と信親は笑っている顔が一番似ていると言われている。つまりは元親とは違ったたぐいの男前で、剛胆な我らがアニキとは違う若いさわやかさが溢れている。
信親は手をあげた男に表を渡した。

「若、なにを頼まれんたんで?」
「読んでもいいんすか?」
「いいぞ」

信親はおおらかにうなずく。
買い出し係は船員の好奇心に答え、朗々と海風に信親の「お買い物リスト」を読み上げた。


・日焼けどめ(しっとりタイプ)
・洗顔料(薬用が好ましい)
・石鹸(からだ用。天然塩、刺激のありそうなものはさける)
・うがい薬(いちご味)
・歯ブラシ(くまさん柄)
・歯磨き粉(いちご味)


「…」
「私物ばかりだが頼まれてくれ」

くれぐれも、と念を押し信親は船室にひっこんでいった。
誰の私物であるか一目瞭然で甲板のだれもがわかったが一人としてなにもいわない、長曾我部軍のある日のこと。