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ゼファミリー6


子犬がおぼつかない足取りで母犬に近寄る。母犬は匂いを嗅ぎ、ようやくわが子が帰ってきたことを喜ぶように子犬の顔をなめ始めた。

『こうしてチャッピーはやっとお母さんに再会できたのです…』

感動的なBGMとしんみりした語り口がさらに涙を誘う。

「えっうっ、よがったなぁぁチャッピい…っ」

テレビにかじりついていたリヒトが涙混じりにつぶやき、ずびびびと鼻をすする。すかさず横から「鼻にやさしい花子ちゃん」ティッシュが箱ごと寄越される。
「おう、すまねえなキラー…」

勢いよくズビーッ!と鼻をかんだリヒト。その真横では同じく悪人面に涙目のキラーが感動を引きずるようにテレビを食い入るように見つめた。

「北海道から宮崎だぜキラー…っ 何キロ離れてると思うよ!? それを、チャッピーはっチャッピーはたったひとりで…っ」
「…っ…、……!」
「だよなあ!だよなあ!途中で富山のほうにいっちまうトラックに乗った時は俺ゃもうチャッピーは母さん犬にあえねえかと…!」

非常に寡黙で無口と思われがちなキラーだがただ極度の対人恐怖症と度を越したシャイ・ガイなだけである。
繊細な神経を持つキラーと下町兄貴を地で行くリヒトが並んで見る番組で特に(二人にとって)盛大に意気投合するのがこの動物番組。泣かせどころで必ず号泣・感動にむせぶ二人を見たら番組ディレクターは「やってよかった…」と報われた思いになること間違いなしだ。

「先週の煙草屋のばあちゃんと看板猫も泣けたよなあ…」
「……、…」
「そうそう。15年間ずっと一緒でばあちゃんがいなくなってもずっと店番して…あ、また泣けてきた」

わずかな表情の変化とジェスチャーで会話を成立させるキラーの才能はそれはそれで凄いが、余さずその意志を読みとるリヒトも大したものである。

「…、……」
「あ!?来週スペシャルなのかよ!キラー、ビデオ予約しとこうぜ!」



嬉々としてビデオ予約に今から乗り出す、養い親とその養い子を見ながら、ルルススは冷静に呟いた。

「二人とも、もうちょっと落ち着いて見てもいいんじゃないかなってルルは思うの」

誰も聞いちゃいないが。