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オリジナル 逃亡者6 須磨ゼツ2


「せっかく咲いたのにねえ」

天気予報は春だというのに長雨を告げていた。

「お花見できないねえ」
「残念」

傘には雨のほかに振り落とされた桜の花がかたちを損なうことなく張り付いていた。

「帰る?」
「このまま歩こうさ。雨に散りゆく桜も風情のひとつかもよ」

須磨は笑った。

「雨でも晴れでも、俺はゼツがいれば幸せ」

ゼツはぐるんと傘をまわしてみせた。


烏と逃亡者はそれこそいつもどおり通り過ぎる季節を過ごしたとさ。
最終更新:2006年07月26日 17:54