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セムリリ3 レジェンド


「兄さん」

完全オフと決めた日は兄は電池の切れたおもちゃのようにぴくりと動かない。働き蟻より休む間のないスケジュールで蓄積された疲労も何もかもをその日一日『機能停止』することで解消するように。
そういう日はリリスも出かけずにひたすら家にいることにしている。
夕刻もすぎてしばらく。そろそろ目覚める頃だろうとベッドの傍らに座り込む。
うつ伏せ寝で熟睡する兄の寝息は息を潜めても聞こえるかどうかのひそやかさで、リリスは時々、魂の遊離してしまった器のそばにいるような気にさえなる。顔をよせて、静かすぎる寝息に耳をすまし、上下する背中の骨の線を確認しても消えない不安に駆られる。

「毒林檎を食べた白雪姫ってこんな感じかしら」

それとも百年の眠りにとらわれた茨姫か。
どちらでも大した差はない。

「兄さん」

呼びかけても微動だにしない横顔に添う。

「キスをしたら、目を覚めてくれる?」

まるで逆の立場でも、それであの黒瞳に自分が映るのならば、いくらでもキスを捧げるのに。