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ゼファミリー3


「おまえ掃除の邪魔だからどっか行ってろ」

ざっくりリヒトに言い捨てられて、キラーは家を追い出された。
何か手伝いたいと思ってキラーもできるかぎり努力したのだが、いざやってみるとリヒトの家事能力の高さは姑並みで、埃が残っている濡れ雑巾の絞りが甘い等々、最終的には「邪魔」だ。
そこで怒ればいいものを、キラーはぐぐっと泣きたいのをこらえてリヒトに従い家を出た。夕方くらいに戻ってくれば掃除も終わってリヒトの機嫌も治っているだろう。要領よく掃除を手伝っていたルルススもいることだし、茶菓子でも買って帰ればいい。
そうポジティブに考えなければ、今月の目標「10回以上泣かない」が果たせそうになかった。月初めであるがペナルティはすでに7回犯している。これ以上は避けたい。
オロロージョのところにでも行こうか、とふらふらキラーが歩きだしたところ、電柱の影にひっそり蹲る影があった。もっそりと丸い。

「?」

近づくと。

「!?」

キラーは思わず飛び退きそうになった。電柱の影にいたのは猫。しかし何故か頭にすっぽりアフロを被っている。
なんで?と疑問符をいっぱい浮かべつつも、キラーはしゃがみこみ、猫に手をさしだしてみた。

「にゃあ」

アフロ猫は人懐っこく、物怖じもせずにキラーの指先の匂いを嗅ぎ、ぺろっと舐めた。

「……っ」

可愛い。文句なく可愛い。たとえアフロだろうが猫は猫。可愛いもの好きのリヒトに育てられただけあって、キラーもそこそこに可愛いものに弱かった。
捨てられていたのだろうか、それとも迷い込んだのだろうか。抱き上げてもアフロ猫はもそっとキラーの胸に頭を預けて安心したように「にゃあ」ともう一声鳴いた。

「……」

連れて帰ったらまた怒られるだろうか。茶菓子と猫では話が違う。そして何より猫がアフロだ。
リヒトはアフロが好きだろうか。
それを真剣に考えだしたキラーに、「おーいおーい」という声が遠くから聞こえた。

「!?」

しゃがみこんでいたキラーがまた飛び退きそうになった。

「おう兄ちゃん!ちょっと聞きたいことがあるんだがいいかい!俺ぁこの辺来たことがなくてなぁ!」

えらくテンションの高い男は凶悪な顔を(表面上)しているキラーにもフランクに話しかけてきた。

「ちっと探しものしてるんだよ、俺と同じアフロでイケてる猫がいなくなってなぁ、見てないか?」

男はアフロだった。とても立派な真っ黒くちぢれた髪を冠し、どう見ても不審者一歩手前だった。

「……っ……」

「頼むよ兄ちゃん、アイツは俺の人生の相棒なんだ。アイツが回してくれる皿じゃなきゃ俺はもう生きていけねぇ。アイツのソウルフルな肉球から生み出される熱いミュージックじゃないと俺は踊れないんだよ!アフロを濡らされたようなもんだ、なあわかるだろ!兄ちゃん!」

なんだかわからないが深刻な話らしい。
半分怯えつつキラーはハッと自分の腕の中のものを差し出した。丸くなって小さくなっているが充分立派な存在感を醸し出すアフロが男の目の前に差し出された。

「おお……おおおおう兄ちゃん!!!!」
「!?」

奇声に驚いたキラーはもうそこから逃げ出したい気でいっぱいだったが猫を抱き取ったアフロ男がいきなり腕をがっしり掴んで離さない。

「俺のハニーを見つけてくれてたのか!ファンタスティック!アンビリバボー!三日三晩探してもハニーはどこにもいなかったんだぜ!?どっかの悪ガキにとっつかまって三味線にでもされてるんじゃないかと俺のハートは張り裂けそうだった……!無邪気にくーくー眠りやがってこの可愛いデビルめ!ああ、兄ちゃん!これは俺の人生始まっての奇跡だよ兄ちゃん!ありがとう!ありがとうな兄弟!」

何だか物凄く感謝されている。キラーは怯え半分驚き半分アフロ猫を抱いてひたすら感激しまくっている男を眺めた。不審者極まりないが、猫をこれほど愛しているのなら悪い人ではないのかもしれないと朧気ながらに感じた。



「ほらよ兄ちゃん」

自販機のコーヒーを手渡されながら、キラーは近所の川原にアフロ男とやってきていた。もちろん男の腕ではアフロ猫がいる。

「そうか、顔が怖くて誤解されやすいのか」

こっくり頷いてキラーはコーヒーをちびちび飲みだした。
ソウルフルなアフロ男はまるでオロロージョのようにキラーの言いたいことをきっちりと理解してくれた。最初はとても怖かったが、太陽が西に沈みはじめるころにはすっかりうちとけて、お互いの人生の悩みなどと語りあっていた。

「ハニーを見つけだしてくれるイイ奴なのに誤解するなんざ器の小さい連中ばっかりだな」
「…………」
「違うってか?」

誤解を解けない自分自身にも問題があるのではないかとキラーは考える。どうにかして解決して、このアフロ男のように気軽に話あえるようになりたい。だがどうしても空回り、第一印象の顔のせいでキラーから離れていってしまう。けして彼らだけが悪いわけじゃないのだ。
そう目で訴えるとアフロ男はそうだなぁと夕日を浴びながら返事を返す。

「だがよ、俺は怖くなかったぜ。兄ちゃん」
「?」
「世の中にはよう、顔が良くたって中身が最悪な連中がいっぱいいるんだぜ。これでも色々、人生の荒波に揉まれてきたからなぁ」

抱いているアフロ猫をかるく撫でてやりながら男は語る。

「兄ちゃんはハートのあったかい奴なんだな。誰かに傷つけちまうって思うから、誤解が解けないんだろう?だがな兄ちゃん、いつかはそういうものはやっつけないとダメだぜ? それに、わかる奴にはわかるもんだ、俺の次くらいに兄ちゃんはいい男だ。俺が保証するってもんよ。大事なのはフェイスじゃなくて、ハートだよ。ソウルだ。わかるかい?」

男は輝いていた。眩しいくらいだった。
キラーはこくこく頷いて、真っ赤な夕日を男と同じように目に映した。
いつか、こうして誰かにわかってもらえるといい。
そんな希望を抱きながら。



アフロ男とアフロ猫は去っていった。

「俺のドリームはハニーと一緒に音楽を世界に伝えることなんだ。いつかビッグになるためあっちこっち歩いてんだ。そんな顔すんなよ、次に会う時は俺はテレビで大ヒットして踊りまくってるからよ、そん時には応援してくれや」
「!」

キラーとがっしりと握手をし、男と男の熱い約束を交わしたアフロ男は猫を抱いて紫に染まった街を去っていった。

「…………。!!!!」

熱い男の余韻に浸っていたのも束の間。すっかり暗くなった空にキラーは真っ青になった。いくらなんでも遅すぎる。門限6時をとっくの昔に越えている。
キラーは即座に踵を返し走り出した。ソウルを共有した掌はまだ熱い。
全速力で走り家に辿りつくと、もっさりとした影が玄関口にあった。

「……!」
「キラァ、てめぇこんな遅くまでどこに行ってたんだ。ルルススが腹ぁ空かして待ってんだぞ!俺だってまだだ!」

それは主婦の必須アイテムおたまを片手に仁王立ちする、ピンクエプロンをひっかぶったリヒトであった。
そうこの家の人間はたとえどんな理由があったとしても食卓は全員で囲まなければいけない掟があった。もちろん誰かが家にいないとなったら、その人間が帰るまで食事は始まらない。

「…………っ! !!」
「ったく、どこほっつき歩いたらこんなに遅くなるんだ。さっさと入れ。……後でたっぷり吐いてもらうからな。覚悟しとけ」
「!」

おたまで首を切る仕草をしたリヒトはそれ以上は追求せずに玄関に入っていった。

「ルルー!キラーのやつ帰ってきたぞー!ご飯にするぞー!」

リヒトの死刑宣告にびくびくしながらも、キラーは家に戻っていった。手をぎゅっと握りしめながら。まだ手は男の約束を忘れてはいない。
今日のことを夕食で語ろう。そんな決意を胸に抱いたキラーだった。
 


※※※後日。

「……心配させやがって、ああ、だから、あいつどっかの川原で変なアフロといちゃついてやがったんだとよ」
【あら、それは心配ねぇ。保護者としては】
「……けっ」
【それにしても驚いたわ。いきなりキラーを出せだなんて。オロロージョならともかく、私のところまで電話するんだもの】
「アイツんところにキラーがいねぇってなったらおまえくらいのもんだろ。エクレメス」
【心当たりが外れて残念だったわね。良かったじゃない。お友達が一人できて】
「信用できるか、アフロだぞアフロ!」
【あら、人は見た目で判断しちゃいけないものではなかったかしら】
「うるせぇ!切るぞ!」

リヒトは電話をガッチャンと切った。

「おらキラー!なにぼっとしてやがる!おめーは風呂掃除しやがれ!」

柄にもなく心配して知っている限りの人間に行方を聞いて回った自分が馬鹿だった。




真夜中~早朝マジック★ アフロの人のムービーうろ覚えなんでアレですが。……ギャグって難しい