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オリジナル 梶君とみっちゃん1 【君と冬と】


「みっちゃん、そのマフラーは派手だ」
「みっちゃん言うな。俺の勝手だ」

というか買ってきたのは光広の姉で、トータルコーディネーターとかいう服装に関してめちゃくちゃうるさい職の彼女は弟の服装にまで口を出す。
小さい頃から姉の着せ替え人形だった光広は彼女が自分の思い通りにならなかったらどのような報復に出るか痛いほどよく知っている。だからおとなしく従っている。
駅で会ってから、マフラーが気に入らないらしい梶はちらちら光広を見て不満たらたらな顔をする。姉の趣味と梶の美的センスはそうとう合わないのだろう。

「犯罪だそんなの」
「うるさい梶」

めっぽう寒がりの光広にとっては東京の冬はきつい。16年過ごしてきた岡山の海沿いはもっと暖かかった。瀬戸内はとても温暖な気候であるとか地理の授業の意味をまざまざと思い知る。底冷えするような風なんて知らなかった。
寒がりの自覚はあったが、東京の初めての冬を乗り越えられそうもない。梶はまだ冬支度など気が早いとでも言いたげな学ランそのままに対して、光広は学ランの中にパーカー、マフラー、手袋の重装備だ。ゆるい校則なので学ランの中身まで指定はされていないが、そこまで?と梶が首を傾げるほどだ。

「これ以上寒くなったら俺はダウンコートを持ち出すぞ。羽根入ったやつ。めちゃくちゃ暖かいんだ」
「みっちゃん、真冬のサッカー観戦しにいくみたいなこと言うなよ。学校までちょっと歩くだけなのに大袈裟」

それでも何か不満そうな梶は光広のマフラーをひっぱる。

「引っ張るな、俺には教室行くまでの9分37秒が寒いんだ」
「計った?」
「俺が歩く速さでは。梶につきあってるともっと遅いんだぞ。ちんたらしてるから」

普通は少し余らせて巻くロングマフラーなのに首にぐるぐる巻きにしている。本当に寒くてたまらないらしい。

「あー、みっちゃん。学校ついたら自販機行かない? あったかいおしるこなら奢ってあげよう」
「食堂のおしるこ薄い。ポタージュのほうがうまい」

どっちもどっちであるが本人達はけっこう真剣だ。梶は小豆の甘さを語るし、負けじと光広も厳選コーンのうんちくを垂れる。よくつるんでいる二人のいつまでも触れることのない平行線がここにあった。

「あれ、そういえばみっちゃん、今日って朝礼集会じゃなかったっけ」
「……やばい、走るぞ梶!」

遅刻すると風紀と体育教師がうるさい。

「動いたほうがあったかいもんね」
「のんびり言うなって俺先行くぞ!」
「うああ、待ってみっちゃん」

ひらひらとたなびくマフラーが先立ち、歩道を駆け抜けた。


「だから、犯罪的だって、言ってるのに……」

走りながら梶はぼやいた。白と赤のチェック柄のマフラーなんて何て紙一重に可愛らしいものを巻いているのか。

「みっちゃんのおねーさんとは一辺話し合う必要、ありだよな……っ」
「おら梶!ちんたらしてたら遅れる!」

走って血色が良くなったのか、真っ赤な頬の光広を追いかけ、まったくもうあんな可愛い姿晒して、と心の中でぶつくさ言ってから、「はいはいっ」と追いかける足を速めた。




牧羊犬梶君と柴犬みっちゃん。高校生は聖域だよ。青春の。もふもふマフラーぐるぐる巻きの高校生に萌える!