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識柚6 かなりパロディです。近未来もの。


「人型アンドロイドのモニター、ねぇ」

じっとりとした眼差しでモニター越しのケイナを睨んだ。
画質のいいテレビ電話はケイナが両手を合わせて、頼む、という姿をしっかりと映している。

「で、今度はどないな規格外品作ったんや」
『失礼な!俺は純然とした好奇心で研究してるんやぞ!』
「おまえが作るもんは大抵常識はずれやろが!犯罪手前マッドサイエンティストのくせして!」

長年の知人をやっているがこの男、頭は優秀なのだがいかんせん常識とかそういうもののネジが二三本飛んでいる。愛玩兼ガードでモニタリングをしたドグロイド(犬型ロボット)は攻撃モードになると口をあけたらミサイルが飛び出すわ背中からは機関銃が姿を現すわ、ろくでもない兵器だった。それが可愛らしいチワワ型の犬から出るのだから末恐ろしい。これでも一応大手のアンドロイド製造企業お抱え研究者なのだから世の中間違っている。
今まで余り人型に手をつけてこなかったケイナが、とうとう興味の矛先をアンドロイドに向けてしまったようだ。一月かそこらでプロトタイプをつくってしまうのは大した才能だがそれを受けるかどうかとなると話は違ってくる。

『ユーズ、どーせ引きこもって掃除もロクにしてへんやろ?ちゃーんと家事機能つけたから便利やで』
「余計なお世話や。断る。めんどい」
『あ、ちなみにもう送っといたから』
「ああ!?」
『送料はまけとくから、しっかりモニター頼むわ。声帯つけてへんから、まずいことも何も言わんし』
「人の話聞けや!おいこらケイナ!」
『ほなよろしくなー』

ぶつんと一方的に電話は切れた。

「あいつは……」

いっぺんシメたらんと、と暗く危ない思考が頭を過ぎるユーズの耳にピンポンと玄関チャイムが鳴らされた。

「まさか……」

慌ててホームシステムを立ち上げてみると、監視カメラからの画像がリアルタイムで送られてくる。玄関口には男が一人立っていた。

「もしかして、コイツか?」

ユーズには見覚えのない、背が高く灰色の頭の男だった。

「おい届けるて、自分で動いてるやんけ…」

普通、アンドロイドやそういったロボット製品はマスターとなる人物が家に梱包されて届いたものを起動させてユーザー登録することから始まるのが普通だ。
ケイナがつくるものは常識が通じない。
ユーズはその言葉をひしひしと感じた。

「あの……クソマッド」

低く罵ってから玄関口へ向かう。自分で動いているならそれなりに知能もあるだろう、帰れと言えば通じるかもしれない。突っ返してやる。
ロックを解除して扉が開くと、モニターで見るよりもずいぶん背の高い男が現れた。いきなり扉が開いてびっくりしているのかちょっとばかり目を見開いている。
ユーズも少し驚いた。その仕草があまりに人間くさすぎて。
あまりロボット製品を好まず周囲に置いたことがなかったユーズにとっては、カタログや知人宅のロボットしか知る機会がなかったので、昨今のロボットというのはここまで人間を真似るようになったのかと戸惑いを覚えたのだ。

「おまえ、ケイナんとこのロボットか」

すると、男はこっくり頷いて手の甲を見せた。そこにはうっすらと刻印がなされており、「Proto-type shiki」という縦に長い記号が刻まれていた。ロボットと認識させるためみえやすい位置に義務づけられているシリアルナンバーがこの男には手の甲に押されたようだ。

「し…シキ言うんか?悪いけど、わいモニタする気ぃないから」

だから帰れ、と言おうとするとシキがにっこり笑った。
肯定なのだろうか。なんで笑う?と疑問が頭を過ぎった瞬間にはユーズはばふっと視界が塞がれた。

「んっ!?こ、コラ離さんか!!」

ユーズが両腕をつっぱろうとしたが馬鹿力でそれも叶わない。ユーズはシキにすっぽりと抱きこまれていた。

「はな、離さんかこのボケー!!!!」

ユーズの絶叫が響き渡っても、シキは全然まったく臆することなくぎゅーっと抱きしめ続けていた。




『どういうことやねん、クソケイナ。こいつ人の話全然聞かへんぞ!ロボ倫理きちんと組んだんか!?』

シキの到着予定時間から数分後。案の定ユーズからの入電があり、ケイナは顔をほころばせていた。モニターでは同じようににこにこ顔のシキがユーズにまとわりついている。

「あーそいつな、前にモニターしてもろたわんこのデータ流用してるから最初からおまえに対する好意が高めなんや」
『はぁ!?こんなデカイ図体して中身チワワなんか!?』
「違う違う、感情の振り幅の問題やから、知能には問題なしやで。ちょっとまぁ、マスターの言うこと聞かんかもしれんけど、基本的には忠実やし。もう懐かれてるやん」
『男に懐かれても嬉しゅうないわボケ!』
「いやーそれよりちゃんとインプリが行われてるみたいやし、こっちは安心やわ」
『インプリ?』
「次のバージョンから提案されとるシステムでなー、アンドロイド個体に名づけるか、シリアルに刻んである名前を声紋で確認してマスター登録しよかって案が出てるねん。おまえの声は電話で貰といた奴使って、コイツの声で名前呼ばれたらマスターやでーっていう命令をしてあるんや。すごいやろ!」
『すごないすごない!このうっとおしいのどうにかせい!!』
「どーしても嫌やったら、名前呼んだりな。そしたら聞くから」
『わ、わかった。こらシキ!やめい!』

するとシキは物凄く残念そうに、名残惜しそうに渋々ユーズから手を離した。それでも顔は悲しそうにユーズを見ている。その様はまさにチワワの時と一緒だ。

「おーおーよく聞いとるな。これなら安心や。シキは家事もガードも何でもしてくれるからなー」
『……まさかまた口からミサイルが出るんやないよな』
「もうあんな派手なんはつけてへんよ。もっと機能的にしたから。お楽しみに」
『楽しみもなんもあるかー!』

ようやくモニターの向こうにいたのが造り主のケイナだと気づいたらしいシキが笑って手を振ってきたので、ケイナも振り返してやる。
声帯をつけなかったものの言語機能は人間なみに備わっているシキだから、今のところは動物のようにスキンシップ一辺倒だがそのうち学習して、色々とコミュニケーションをしていくことだろう。
シキを叱りつけながらこちらにも怒気をぶつけてくるユーズを見ながら、ケイナは楽しげにこれからのことを考えていた。




つ、続かない。つもり!