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ダークエッジ妄想5 吉白3 ほむら


「なぁ、こういうところに閉じこめられて寂しくないわけ」

暗く狭い、墓所のさらに奥まった闇。
たぶんあの霊安室めいた墓に押しこめられたら、高城九郎は泣きわめくこともできずに失神するだろう。
太陽を浴びることのない白右はそこで夜の訪れを待っている。
吉国は、日没の過ぎた校舎で白右の出現を待っている。いまだ開かれぬ白い墓所の扉の前に座り込み、煙草を指先でこする。小さな火が灯り、バニラの匂いが漂う。赤坂からもらう煙草はいつもこんなだ。

「寂しいとか悲しいとか、そういう感情を持っていた記憶はある。だがそれに翻弄されている時間は終わった」
「じゃあ、全然今は感情がないってことか」
「そうでもない」

王としては弱い肉体。最愛の妹の裏切り。白右を動かす原動力のひとつには紛れもない感情が胸に残っている。

「怒り、だろう」
「……あんた、それで怒ってんの」

声があまりにも平坦すぎて冗談かと吉国は笑った。

「吉国は、知らないか」
「なにをだ」
「感情というものは頂点に達すると、落ち着くんだ。炎は温度の低い赤い火では揺らぐが、千度に達すると炎は真っ白になる」
「あー…怒りすぎて頭がプッツンした、みたいな?」
「おまえの言葉では、そうなるのかもな」

その言葉からすると、白右は怒り続けている。吉国の足りない言葉に補足をつける穏やかな声の中にも、今現在の状況に憤怒していることになる。

「そうだよな、なんかこう、スコーンと突き抜けちまうと妙に冷静になっちまうもんな」

火を見た時の自分の反応でも思い返しているのかも知れない。冷静というよりは吉国は陶然としているが、思考はむしろクリアなのだろう。
一人うんうんと納得しているらしい吉国の声を遠くで聞きながら白右は己の中の憤怒を思う。
白く、真っ白な炎が他の感情を食いつぶして燃えあがるならばそれもいい。一度は吹き消されてしまった炎が、すべてを焼き尽くす劫火の火種であったことを思い出させることができるなら、これほどの復讐はない。
吉国が制御しきれず揺らぐ赤い炎ならば、白右は名にその色を冠する白炎になろう。
すべてを壊すために。

「そういうの、冷静にマジギレするっていうんだ」
「そうか」

墓所の扉が、開く。劫火の宴への始まりを知らしめすように。