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オリジナル 郷愁2 公園


「あー……」

缶コーヒー片手に休憩を楽しむため、ミシモは地下から地上にあがっていた。紙屋町西という電停を中心とした一角は繁華街というほどでもないが、八丁堀駅に並ぶ福屋、天満屋に続いて、天下の名店そごうがある。さらにはその近くに数年前、ハンズという日曜大工専門店みたいな大きな店ができたがミシモはまだ行ったことがない。
ビジネス街とショッピング街の顔を持つ市内でも賑わうところ。ここで休もうとするならば、市民球場の向かいで緑の豊かな原爆ドーム周辺のベンチがいい。整備されて観光の目を意識された公園はいささか人の出入りが多いものの、日の光をいっぱいに浴びる公園ではミシモが見たくないアレやソレやの気配が地下に比べて格段に少なかった。

「ミシモさんっ」

犬ころのような弾んだ声を出して飛びついてきたのはミシモの主なガード担当区シャレオの地縛霊ヨシタだった。シャレオの地上出入り口の公園の入り口はぎりぎりヨシタが離れていられる範囲らしい。明日はもっと遠くに休憩しにいこうと決意するミシモタガヤ。

「なんじゃヨシタ、上に出てこれるんか」
「愛の力っすよミシモさん!」
「あーほうかほうか」
「聞いてないし!すっごく聞き流してるし!」

このやけにハイテンションな地縛霊ヨシタは何をどうトチ狂ったのかミシモに懸想しているらしい。腕も体もスカスカな幽霊が、生きている上でちょっと目の『見える』ミシモに愛を囁くのだから茶番以外何者でもない。だがヨシタは少なくとも本気だ。
そこがミシモの頭痛の種でもある。

「地縛霊ならはよう消えるなり悪霊なりになりゃええんじゃ」
「ひっでぇやミシモさん、俺、悪霊なんかになりたくもないし自分が何かもわかんなくなるような霊にはなりたくないよう」

そういった類は総じて暗く、地下のシャレオに流れこんでくる。広島駅行きと己斐行きの電車が分かれる十字路(己斐行きは西の紙屋町西。広島駅は文字通り広島駅を目指し紙屋町東へ運行する)、この形に添いながら真下を中心に営業しているのが地下ショッピングモールシャレオ。小じゃれたショップが軒を構えて主に女性客をターゲットにしているモール街はミシモにとっては幽霊さんたちの巣窟なのだ。
ちょっとばかり勘の鋭い人間なら「ここは良くない」だのと言い出すだろうし、鈍い人間でも「ちょっと空気が澱んでる」とか「方向感覚が狂わされる」とか言うかもしれない。
まあ後者は本人が方向音痴でなければ、の話し。

「休憩ですかーミシモさん。いいですねぇ。心の洗濯って奴っすよね!こういう緑の多いところってマイナスイオンっていうんですか?そういうの感じますよねぇ!」
「黙っとれ。おまえがおるだけで疲れるんじゃ」

えー!と抗議する地縛霊を放っておき、ミシモは缶コーヒーを飲み干す。中年男が好むにしては甘ったるすぎる「牛乳屋さんのコーヒー」はミシモの大好物だったりした。



もう店名がいっぱい(笑)牛乳屋さんのアレって紙コップ限定だけかもしれませんが、缶コーヒーがあったら飲んでみたいという欲望でw