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識柚3 ※パロディにつき注意 うちにメイドがやってきた。ぎっくり腰をやってしまった古参のメイドの親戚らしい。 「気ぃは強いけど、優しい子やからお願いします」 まったりとした彼女は京都育ちで、そうかそうか、じゃあその子もきっと京都美人に違いないと思いこんでいた。 …思いこんでいたかった。 「クソ、なんでわいがこないなカッコして庭掃除せなあかんねや…っ」 ひたすら悪態をつきながらザッザッと箒を振るう(ほとんど振るっていた。掃く、じゃなくて)我が家のメイドの誰もが着ている、ピンクの影。先代のレトロ趣味が変な具合に歪んで、ひらひらとした桜色の肩紐に、パフスリーブ、スカートは黒というスタイルが定着している。 そのくせ口には煙草。しかも、オヤジ好みのあの銘柄… 見た目は抜群。もしかしたらうちのメイドの誰よりもあの服が似合っているのに、中身はてんで… 「おっさん?」 「こぉぉるぁあ! 誰がオッサンじゃボケェ!」 「うがぁっ!? ほ、箒っ!?」 なんて地獄耳。そして瞬速。俺がぽそっと呟いただけなのに、赤毛をがさつにまとめただけの頭がぐるっと動いてその手の竹箒を槍投げのごとく投げてきた。 …一歩間違ったら死んでるんですけど。かろうじて避けた箒がきちんと手入れされた芝生に深々と突き刺さっているのが恐ろしい。どんな腕力だ。 「あ? なんや識かいな」 「…いちおう、俺がこの家の主なんですけど…」 「年下に敬語やらサマ付けできるかい。どーしてもっちゅうんならしてやってもええで? ええんか、識サマ?」 「いや、無理して呼ばなくていいです」 なんで俺が敬語なんだ。しかしこのメイド…ユーズからサマ付けされると何か小馬鹿にされているような…実際されている気もするが、本来の従順な雰囲気のある響きにならないので好きに呼んで貰うことにした。 京都育ちなのは古参のメイドだけであって、ユーズをはじめとする一族郎党はすべて大阪出身らしい。しかも濃厚なトラキチ。 初日に挨拶をすっぽかして「今日はマジックがかかっとるんや!」と虎色一色になってすっ飛んでいったのは記憶に新しく、消えることの出来ないファーストインパクトだった。 「キヨさんが戻ってくるまででいいから、頼みますよ」 「当たり前や!いつまでもこんな格好しとられるか!」 「だって、今それしかありませんから。…なんなら、俺の趣味のチャイナでも…」 「断る!断固いらん!」 俺のささやかな譲歩を蹴り飛ばし、ユーズは刺さっていた箒を抜き取ると、また力任せにざっざっと庭掃除を始めた。 「あーモクきれた。ご主人サマ煙草もってへん?」 横柄に横柄すぎるユーズは不敵にニヤリと笑ってみせた。 終われ。 某所で見かけたメイドさんのユーズにきゅんとして勝手に妄想。スイマセンスイマセンスイマセン…柄の悪いメイドユーズが突然書きたくなっただけです。
識柚4 彼岸花 彼岸花や、と師匠の声が跳ねた。 「こないなとこに咲いとるんや」 「俺も知らなかった…」 都会のど真ん中、申し訳程度の緑地の中で茎からまっすぐに生えた紅い花に識は目を細めた。 その姿は誰かに似ている。 天に牙剥き、気丈に佇む。 葉と花が出会うことはなく、どちらかが土に没してから改めて日の目を見られる。 「師匠は彼岸花バックにしても似合う」 「なにいうてるんや」 赤いからかなと誤魔化した。

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