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エレシロ3 【出来損ないの幻】  笑って。頬を包んで。俺の腕の中で眠って。  けれどそんなものはあっさりと崩壊を告げる。  目覚めてすぐにそれは、醜悪な幻だったのだと気づく。  はなから気づいていた事実を今更のように傷つくのはそれを望む俺自身が認めたくないからだ。  結局俺が望む人は、夢などでは生きてはいけないことを。  欲望と願望が練り上げた木偶を抱いている俺が一番、滑稽な道化なのだ。
エレシロ4 【「……におう」】 士朗がぐっと寄せた眉根を白々と見あげた。 「片づけ、兄貴がしろよ」 「…おまえもやれよ」 「俺はいいの」 ごろっとソファに寝転がって、雑誌をめくる。写真の綺麗な撮り方、撮られ方。むしろ汚いものを美しいと思わせる撮り方がしたいね。そのほうが生きているものの匂いを感じる。 「なんで」 「昨日の晩は俺がやったし。今日は兄貴」 兄弟で家賃も折半、ならお互い家事も当番なり役割振ったほうがいいだろ? 最初それでいいって言ったのをもう忘れてるなコイツは。 「ほっとくとハエがわくから生ゴミ早いとこ処理しろよ」 「…ゴミの日は」 「月水金」 引っ越したところのゴミ収集日くらい覚えろ。どうせこれから住み続けるんなら。 三角コーナーの水を切り始めた兄貴は頻りに臭い臭いと言う。 指と指で囲ったファインダーにげんなりした顔を収めながら、俺は自業自得だろと言った。

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