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「識柚3」(2006/07/26 (水) 05:19:11) の最新版変更点
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識柚2【きかない、きけない、きこえない!】
誰にだって秘密はあるもの。
誰にも明かしたくないそれに限って、誰かに知られてしまうもの。
その上知られたくない相手に、知られてしまうのが、定石。
「ユーズってさー弱点なさそうだよね。なんかもう達観しちゃったから弱いものない!って感じ?」
「なんや、人を仙人みたいに言いなや」
「ハイハイユーズ悟りの境地のポイントはどこですかーっ?」
「うわ、セリカ酔うとるやろっ」
「あーあーもうセリカ、ほらー真っ赤だよ」
「エリカ、もうコイツ連れて帰りや。弱いくせに飲みまくるんやから…また路上で歌い出すで」
「歌うぐらいで済んだらいいんだけど…ほら、セリカ、かえろ」
「やーんー。まだ飲むぅ」
「…あーあ、あれ完璧酔っちゃってますね。介抱するエリカも大変だな」
「せやな。ま、世話焼くの好きそうやからええかもしらんけど」
「…師匠はそれで何杯目?」
「さぁなー」
「…師匠は今は来ないけど、明日にぶり返すからな…」
「ああ? なんか言うたか?」
「あ、いや別に…それより、さっきセリカに何絡まれてたんです?」
「弱点がどーのこーの言う話。わいには弱点なんかないんやろーとか言われた」
「へぇ…」
「わいかて人間やし。弱点くらいあるわい」
「そうだなー。足の裏とか弱いですよね。背筋を触られるのもあれだし…そうそう、寝てるときにいじると師匠けっこう面白いですよ」
「なっ、おまえ人の寝込みに何してんねん!」
「全体的に敏感なんじゃないんですか? あとは指先とかもけっこう…あと」
「き、聞いてへん! そないなこと誰も聞いてへんやろが!」
「師匠、聞いておいたほうがいいんじゃないの? 心の準備とかできるでしょ」
「きかへん、きけへん、きこえへん!」
識柚3 ※パロディにつき注意
うちにメイドがやってきた。ぎっくり腰をやってしまった古参のメイドの親戚らしい。
「気ぃは強いけど、優しい子やからお願いします」
まったりとした彼女は京都育ちで、そうかそうか、じゃあその子もきっと京都美人に違いないと思いこんでいた。
…思いこんでいたかった。
「クソ、なんでわいがこないなカッコして庭掃除せなあかんねや…っ」
ひたすら悪態をつきながらザッザッと箒を振るう(ほとんど振るっていた。掃く、じゃなくて)我が家のメイドの誰もが着ている、ピンクの影。先代のレトロ趣味が変な具合に歪んで、ひらひらとした桜色の肩紐に、パフスリーブ、スカートは黒というスタイルが定着している。
そのくせ口には煙草。しかも、オヤジ好みのあの銘柄…
見た目は抜群。もしかしたらうちのメイドの誰よりもあの服が似合っているのに、中身はてんで…
「おっさん?」
「こぉぉるぁあ! 誰がオッサンじゃボケェ!」
「うがぁっ!? ほ、箒っ!?」
なんて地獄耳。そして瞬速。俺がぽそっと呟いただけなのに、赤毛をがさつにまとめただけの頭がぐるっと動いてその手の竹箒を槍投げのごとく投げてきた。
…一歩間違ったら死んでるんですけど。かろうじて避けた箒がきちんと手入れされた芝生に深々と突き刺さっているのが恐ろしい。どんな腕力だ。
「あ? なんや識かいな」
「…いちおう、俺がこの家の主なんですけど…」
「年下に敬語やらサマ付けできるかい。どーしてもっちゅうんならしてやってもええで? ええんか、識サマ?」
「いや、無理して呼ばなくていいです」
なんで俺が敬語なんだ。しかしこのメイド…ユーズからサマ付けされると何か小馬鹿にされているような…実際されている気もするが、本来の従順な雰囲気のある響きにならないので好きに呼んで貰うことにした。
京都育ちなのは古参のメイドだけであって、ユーズをはじめとする一族郎党はすべて大阪出身らしい。しかも濃厚なトラキチ。
初日に挨拶をすっぽかして「今日はマジックがかかっとるんや!」と虎色一色になってすっ飛んでいったのは記憶に新しく、消えることの出来ないファーストインパクトだった。
「キヨさんが戻ってくるまででいいから、頼みますよ」
「当たり前や!いつまでもこんな格好しとられるか!」
「だって、今それしかありませんから。…なんなら、俺の趣味のチャイナでも…」
「断る!断固いらん!」
俺のささやかな譲歩を蹴り飛ばし、ユーズは刺さっていた箒を抜き取ると、また力任せにざっざっと庭掃除を始めた。
「あーモクきれた。ご主人サマ煙草もってへん?」
横柄に横柄すぎるユーズは不敵にニヤリと笑ってみせた。
終われ。
某所で見かけたメイドさんのユーズにきゅんとして勝手に妄想。スイマセンスイマセンスイマセン…柄の悪いメイドユーズが突然書きたくなっただけです。