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識柚1 【別れ道、右も左も君次第】  駅へと続く道。  アパートに続く道。  いつも選ばせようとする。 「帰ってほしいですか、本当に?」  他でもない、おまえが尋ねてくる。  無邪気に。  残酷に。 「師匠、選んで」
識柚2【きかない、きけない、きこえない!】 誰にだって秘密はあるもの。 誰にも明かしたくないそれに限って、誰かに知られてしまうもの。 その上知られたくない相手に、知られてしまうのが、定石。 「ユーズってさー弱点なさそうだよね。なんかもう達観しちゃったから弱いものない!って感じ?」 「なんや、人を仙人みたいに言いなや」 「ハイハイユーズ悟りの境地のポイントはどこですかーっ?」 「うわ、セリカ酔うとるやろっ」 「あーあーもうセリカ、ほらー真っ赤だよ」 「エリカ、もうコイツ連れて帰りや。弱いくせに飲みまくるんやから…また路上で歌い出すで」 「歌うぐらいで済んだらいいんだけど…ほら、セリカ、かえろ」 「やーんー。まだ飲むぅ」 「…あーあ、あれ完璧酔っちゃってますね。介抱するエリカも大変だな」 「せやな。ま、世話焼くの好きそうやからええかもしらんけど」 「…師匠はそれで何杯目?」 「さぁなー」 「…師匠は今は来ないけど、明日にぶり返すからな…」 「ああ? なんか言うたか?」 「あ、いや別に…それより、さっきセリカに何絡まれてたんです?」 「弱点がどーのこーの言う話。わいには弱点なんかないんやろーとか言われた」 「へぇ…」 「わいかて人間やし。弱点くらいあるわい」 「そうだなー。足の裏とか弱いですよね。背筋を触られるのもあれだし…そうそう、寝てるときにいじると師匠けっこう面白いですよ」 「なっ、おまえ人の寝込みに何してんねん!」 「全体的に敏感なんじゃないんですか? あとは指先とかもけっこう…あと」 「き、聞いてへん! そないなこと誰も聞いてへんやろが!」 「師匠、聞いておいたほうがいいんじゃないの? 心の準備とかできるでしょ」 「きかへん、きけへん、きこえへん!」

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