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オリジナル 逃亡者2 【断絶空間】 「おまえの禍々しい気は吐き気がする」 嫌悪に顔を歪ませた天使はすらりと剣を抜いた。天使といっても彼らは神の心を叶えるために戦を選ぶ。 「おまえの思念は毒だ。弱く儚い人間には悲劇しか招くまい」 血涙の悪魔。爵位どころか名前を誰も知らないほどの、矮小な存在が最近、力をつけているという伝えを聞いた時、討伐の対象ができたと天使は思っていた。 だが対峙してわかる。 この悪魔は毒なのだと。凶事を招く翼を持ち、血涙を頬に刻む悪魔は、長ずればやがて天上に牙剥く勢力の一端を担うだろう。 「戦天使、教えてくれるか」 長く伸びた猛禽の爪が毒々しい赫。まるで涙を吸ったように悪魔の衣も髪も穢れた色をしている。 「天使の血は、甘いのか。それとも苦いのか」 「神の赦しを請え」 血涙の一滴が空を切った。 切り刻まれ消滅しようとした天使の肉に穢れた力を注ぎ、無理矢理に形を残した悪魔は、天使の絶叫を聞きながら黙々と食事を続けた。 血涙の悪魔は世界で最初の天使喰らいとなったが、後に漏らした。 土をはむようだった。これならば、最初に喰らった神父のほうがよほど良いと。  
オリジナル 悪魔3 【細切れの正体】  天使喰らいはおまえのおかげで流行ったんだよと、ヤジフーは言った。  枯れた大樹の枝に座り、瞼をあげたことのない悪魔はひっそり苦笑した。  ヤジフーもまた下級の悪魔だが、暴食の王の支配下にある彼は何でも口にしなければ気が済まない。 「一度食ってみたいとは思っていたんだが、まぁものの見事にハマッちまったよ」  真白い細切れの肉を囓りながらヤジフーは語る。 「土塊を食むのがそれほど快感か」 「ああ、肉には飽きた。俺にはサッパリしてて美味い」  では菜食に挑んでみたらどうかと口を開きかけたが、自分が口を出す問題ではないとそれに関するコメントは控えることにした。 「おまえの羽根、また大きくなったな」 「先日、シスターを食った」 「女か。女の肉は甘いな。年をくったのは脂っこいが俺は嫌いじゃない」  さっきと言っていることが矛盾しているが、どうせヤジフーが語るのは今まで喰らったものへの感想であるから、前後の会話などあまり気にしない。  そのうちこの悪魔は同族すら喰らうかもしれないと思いながら、それはその時、どのような罪業が重なり、悪魔としての価値はあがるのだろうかと考える。  つまり血涙の悪魔はそれ以外には興味がないのだ。  天使を喰らったことにより、ヤジフーの曲がって生える角の拗くれが一層酷くなったのを見届けながら、その口からこぼれる肉を眺めた。 「明日あたりも天使を狩りに行くが、おまえもどうだ?」 「天使を喰らうくらいなら地上へ行く」  これでも血涙の悪魔にとっては、ましなほうの友人である。

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