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 ホリチュン4
 
 
 それはヒトで言うところの「フラッシュバック」というものに近い。
 それらは、エレクトロがきちんとした自我を持つ前の時期に見たと推定される記憶の映像だ。洗い出された記憶に、エレクトロ自身はただただ既視感に苛まれる。
 
 
 
 草の海に立ち尽くす。白い花が揺れている。
 風が頬を髪をなぶり、空も大地も夜に浸食され、足をつけているところが地面であるかという確信も薄い。
 誰かに呼ばれているという激しい感覚に全身を支配され、行かなくてはという強い意識に支配されていた。
 脳が焼ききれるようなメモリーの氾濫。
 
 覚束ない足取りで草を踏む。緑の海をかきわけどれほど歩いたのか。
 陽炎のように揺らめく人影を見つける。
 
 『……!』
 
 その人影の名前をエレクトロは誰よりも知っている。
 
 
 
 くらりと訪れた、目眩のような揺れ。
+
 「エレクトロ?」
 「めまったかあ、だっせー」
+
 可愛くないことを言うのはグラビティだ。黒い目は子供の無邪気な残酷さでエレクトロの頽れた姿を映す。
 一方の棘つきのメットのアーミーはこういう時だけ無表情の中にいつもはない光を目の中に宿す。実は本当にこの中で人間らしいのは誰より冷徹だと言われているこの背の低い少年かもしれない。
+
 「んーん。ちょっとフラッシュバック」
 「最近、回数が多い」
 「そう?充電が足りないせいかもな。早いとこ休めるところ、探そう」
+
 誤魔化し、先を急がせた。日が沈むのがこの辺りはまだ早い。できれば雨露を凌げる場所で眠りたい。
 グラビティはともかく、アーミーはエレクトロの演技に乗ってくれたのか、どうかわからない。
 翻る襤褸布の外套。その切れ端を目に留めながらエレクトロは人知れずため息をつく。
 
 
 フラッシュバックは思い出させる。二人の少年たちと戯れる時はあくまで、鎖つきの自由がもたらすものだと。
 この体のどこもかしこも、忘れてはいない。いや、忘れることが許されるはずもない。
 その束縛を厭う気持ちもある。疎む気持ちも、もちろん。
 だが、この体は覚えている。
 全身を支配され、浸食され、一体となるその快感を。震えるような、その悦びを覚えている。