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氏政様の守人1
※まんま「南君の○人」なこたうじ。こたが小さくなったら?な小ネタ集。
「うむむむ、困ったのう」
唸る氏政の前には座布団ひとつ。座る者はいない。いや、ある。真ん中にちょこんと。
「戻るすべもわからぬとはのう。じゃが、ほかにおかしなことはないのじゃな?」
さながら御伽草子の一寸法師か。一際背の高かった風魔小太郎が手のひらに乗るほど小さくなっていた。朝目覚めたら既に姿は変わり、装束に埋もれていたのである。
今はちぎった布や紙を体に巻き付けている始末。
「枕元におまえがおった時にはたまげたものじゃがな…ほかに障りがないようで安心したわい」
氏政は小太郎に笑ってみせた。この無口だが心根は優しい忍びはこのようになってしまって不安より勤めを果たせないと思いこむのをやわらげてやりたかった。
「ともかくその格好をどうにかさせなければの」
小田原城下は兜や鎧づくりの上手者がいるだろうが、身の丈一寸の者の細工となると難しいだろう。
「孫や娘の置いていった雛遊びの一式があるわい。ひとまずはそれを出させるゆえ、着るのじゃぞ。そんななりでは風邪をひくわい。…小さくなったとしてもおまえはこの栄えある北条家の守りの要じゃぞ」
「!」
兜のない額を覆う前髪がふわふわ揺れる。赤い薄野のようなそれに目を細めた。
「まあ、あとは弟どもだけでのうて、娘らにも見つからないようにするのじゃぞ」
氏勝はじめ、さんざん北条家の男どもに追いかけ回された小太郎である。今度は女衆に追いかけられる危険があった。
「!!」
小太郎は弾かれた鼠のようにぴゃっと飛び上がった。
風魔小太郎、受難その他もろもろの日々の始まりだった。