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たけとみ4
「ただいま秀吉」
期待しているという言葉はそれを発した本人がいなくても魔力を持って半兵衛の
背中を支える。
たとえ未来を紡ぐ子供だろうと悲しい戦をし続ける農民だろうとほふることに容
赦はしなかった。
「戻ったか」
「ああ。北は寒いね、君がいかなくて正解だったよ」
仮面を落とした半兵衛がその手で秀吉の肩に添う。
「冷たいな」
「こんなものじゃなかったかな。雪にまみれて冷えたのかもね」
あそこは憎らしいほど雪が多いから。
健やかという言葉にあてはまる自分を半兵衛は久しく忘れている。
「でも秀吉が常たる僕のぬくもりを思い出させてくれるんだろう?」
だがそれより手をのばして得たいものに半兵衛は微笑みかけた。
たけとみ5
赤糸威に矢が掠ったらしく、肩のところがちょっぴり綻んでいた。
「秀吉、新しいものを用意したよ」
「まだ使えるだろう」
「いついかなる時も覇者たるもの完璧な姿でなければね」
半兵衛はにっこり笑って古い鎧をとりあげた。
「今度の鎧は染め糸の産地を変えたから、より鮮やかになって遠くからも秀吉の姿が見えるようになる。大将の姿が見えることは志気向上につながるよ。それから耐久度はそのままに計量化をはかったんだ」
立て板に水のごとく秀吉を言いくるめた半兵衛は新しい鎧を着せつけ、うっとりしてから古い鎧は自分のコレクションに加えた。
秀吉は秀吉で、半兵衛の別の意味を示す「病気」が始まると本人の気が済むまで好きなようにさせている。それがついうっかり押し倒される結果にもつながりかねないのだが、秀吉はある分野で驚くほど寛容で無頓着だった。