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ちかなりちか1 捏造上等の過去話
その昔、超絶かわいい子をみかけた。
厳島神社の平行する廊下と廊下で父親とその家臣について歩いてる子だった。
一応神域であるので、お互いの敵国武将たちはあからさまに目をそらしている中、そのこの目はまっすぐで輝いていた。
どうにも初めての場所にきょときょと目を泳がせていてその様も可愛い。白い髪と肌がやけに目に残る。
「あれらは長曾我部の…」
「いずれ若殿とあいまみえることになりましょうな…」
「まあ何ともひ弱そうな若子だが…」
後ろについてくる家臣を切り捨てたくなった。
姫若子と呼ばれていた初恋の人とでも言うべき相手が長じていつのまにか鬼若子と呼ばれることになろうとは露知らぬ毛利の若様だった。
捏造チカナリチカ。
どこかでそんな出会いがあればいい
こたうじ1
「氏政様、あんなところに風魔殿が」
城下を見回ってきた帰り、家臣が天守閣を指さした。
「ぬ?あやつまたあんなところに…」
凄腕忍の風魔小太郎は雇われて日は浅いが城内では信頼も篤い。寡黙というか言葉を発する場面にすら雇用主の氏政は遭遇したことがないが案外不自由もなかった。
そして彼は任務がない時は大抵高いところで日がな一日何をするでもなく過ごしている。
「どうじゃご先祖様がごらんになってきた北条家の栄光の眺めは。そこからじゃとよく見えようて」
天守閣に上った氏政が小太郎に声をかけてみた。気配はとうに読んでいたのだろう、屋根瓦から微動だにしない。
「ほれ、もうちょっとこっちに来んか。北条家代々に伝わる銘茶をこの儂直々にふるまってやるぞい」
茶の相手をせいと言うと嫌がる素振りもなく風魔は氏政のそばにやってきた。ご先祖様をはじめとして輝かしすぎる前任者に比べると氏政はぱっとしないが茶道もいまいちだ。ほとんど下手の横好きである。
「ウム、茶室も悪くないが栄光の小田原城下を眺めるのも乙じゃのう」
「…」
春風うらら小田原は穏やかそのものだ。
若干渋すぎる茶を小太郎はすする。あんまり見えないが特に顔色に変化はない。
「なかなか儂の茶につきおうてくれる輩はおらんでのう」
どうじゃ小太郎、と氏政は碗を片手に言った。
「たまに儂の道楽につきあってくれんかのう。もちろんそれも報酬にいれてな」
すると小太郎は不思議な動きを見せた。頷くのだが瞬時に首をふる。素早いだけに妙だ。
「なんじゃ、お主も茶は嫌いか」
ぶんぶん
これには躊躇いなく否定。
「ほお、じゃあ茶につきおうてくれるか」
こくこく
忍らしい動きで頷く小太郎。
「んん?なにがいやなんじゃ?」
「…」
小太郎は答えなかった。
「ひょっとして、『ぼらんちあ』かの?」
「…」
まだ何か違うようだが概ねあっているらしい、忍が頷く。
「そうかそうか、うむ、じゃあ頼むぞい小太郎」
こっくり
小田原の天守閣で主従はそんな新たな契約を交わした。
唐突に小田原主従萌え。氏政じいちゃんを支えるこた。けなげ度はかすが以上かと。