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「ジェノギガ4」(2006/07/29 (土) 06:07:45) の最新版変更点
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葉皆12 一万ヒットリクエストありがとうSS
リクエストまおうさま:葉皆
※まおうさまのみ、ご自由にお持ち帰りください。
『煙草』
煙草の煙を紫煙と書くことがあると教えたことがある。
「それじゃまんま甲ちゃんだよね」
「何でそうなる」
「えーやっぱりラベンダーって紫っぽいし」
「そんな怪しげな色の煙が出て溜まるか」
屋上の一服は格別だが最近は葉佩のせいで味わう寸暇も与えられない。目ざとく見つけてきては隣に座る。
「……そういうおまえ、匂うぞ」
「え?え?マジ?出がけに銃の整備したから油の匂いとかしちゃったりする?」
「馬鹿、違う」
皆守はすっと手をのばして、袖をくんくん嗅いでいた葉佩の、制服の内ポケットから紙箱を掴みだした。
「……てへ。甲ちゃん、鼻いいね」
「吸ってる側は鈍くなるっていうだろ」
土と血と硝煙の匂いがすると揶揄したのは誰だったか。
「今日は一本だけだよ? 月に一箱くらいだもん」
「喫煙者に変わりはないな」
変に嗜好品を増やしたら長期調査の際に集中力が失われやすいから、制限されているのだという。
「ニコチンで遺跡とかお宝が変質したらいけないしね。調査前後は禁煙徹底」
「見事に破ってるじゃねえか」
「建前だよ。みんな、ガチガチじゃ息が詰まるだろ」
皆守から紙箱を取り返した葉佩は、いかにも手慣れた仕草で火をつける。
「いいねえ青空の下で一服」
「おまえいくつだ」
「……さあ?」
子供っぽい葉佩が時々そんな老成した顔を見せるから、皆守は洞察眼に優れていても葉佩の本当の年齢を言い当てたことがなかった。葉佩は妙にちぐはぐだ。
「まぁ安心してよ。甲ちゃんの大好きなラベンダーの匂いを消すほど、俺のは強くないから」
割り込んじゃってたらごめんね。
「甲ちゃんはその匂いに包まれていたいんでしょ?」
わかったような顔をして、細い紙巻き煙草をくわえた葉佩が笑みを刻む。まるで獲物を前にして舌なめずりする獣のような。
一瞬として安定しない空気を漂わせる男、葉佩は立ちあがった。
「さて、授業行きますか。次は……現国!? 甲ちゃん甲ちゃん!次のって小テストじゃなかった!?」
「……教科書読んでりゃできるだろ」
「やだもう俺、ニポンゴまだよくわかんない深窓の帰国子女なのに!」
何か色々と間違ったことを喚きながら、葉佩は煙草を懐の携帯灰皿(ロゼッタ協会ロゴ入り公式グッズ)にねじこんで、「やっちーにヤマかけてもらってくるから、お先!」と屋上を去っていった。
苦い草とラベンダーが混じる屋上で、皆守は「とっくに割り込んでるだろうがよ。あの阿呆」と呟いた。
一度書いてエラーで消えちゃって、全然違う葉皆になりましたが、テーマは『(葉佩の)煙草』でした。まおうさま、葉皆リクありがとー!葉佩は天然でも確信犯でも腹黒でも何でもありで!
ジェノギガ4 一万ヒットリクエストありがとうSS
リクエスト栗那さま:ギガデリックが出る話
※栗那さまのみ、ご自由にお持ち帰りください。
『空気』
澱みは揺るがすものがなければ平穏と偽ることができる。そのぬるま湯の如き闇の底で、ギガデリックは微睡む。少年の面は眠り顔であってもあどけなさというものが全く見当たらない。冷たい彫像のように見えた。
『可愛くない寝顔だねェ』
キャップの影になった顔を包んだ手。それは重力を無視して、天井から垂れ落ちてきた闇のように逆さになった男から伸びていた。
澱みを無遠慮に掻き回す手の主の名はジェノサイドという。
「…てめぇか」
『ご機嫌いかが』
「いつもどおり最悪だ」
薄い瞼があがり、三白眼がジェノサイドを映した。
『上のエグゼ君が頑張ってるみたいだね』
「ああ、あいつが制限コードを埋めるおかげで眠たくもねぇのに動きが鈍る。毎日毎日飽きないこった」
『まァ、そのためのエグゼ君だからねェ』
かき乱す手がジェノサイドならば、澱みを澱みのままに封じようとするのが『上』にいるエグゼだろう。隠された最下層に鎮座するギガデリックを封印するためだけに生きる少年はギガデリックよりも幼い風貌をしているというのに、恐るべき力を持って破壊のためだけに存在するギガデリックを制している。
「…そういえばおまえ、双子の兄弟でもいるのか」
『この体が、まともにヒトの体から産まれてきたように見える?』
「見えねぇな」
今はマシンゴーストに似た質量を持たない姿をしたジェノサイドだが気分次第で人間そのものになることもある。彼は自らを『狭間の人間』と嘯いていた。ヒトでありヒトあらざるものは巷に溢れているとギガデリックは思うが、ジェノサイドはその内でもぬきんでているだろう。
「だがこの間こいつで見たぞ」
傍らに侍る目玉の群を叩く。気が付いた時には側にあった配下のひとつだ。
「同じ位相で同一人物が存在するか」
『世の中には、同じ顔が三人いるっていうよ』
霜のような銀髪の向こう、ジェノサイドの表情は読めない。顔の半分を覆う遮光スコープがそれを許していないのだ。
「ぞっとしねぇな、同じ顔が三つもあるのかよ」
くく、と逆さのジェノサイドに向かってギガデリックは低く嗤った。
「俺だったら潰すぞ」
目玉のひとつがテレビモニターのように砂嵐を映した。乱れた灰色の嵐の中、白銀の髪の青年を映した。
黒と赤に彩られた衣服を纏い、その顔と髪だけが浮き上がるように白い。
ジェノサイドはスコープの外に現れるような表情は微塵も見せなかった。
『ああ、彼ね』
幾分懐かしげな色だけがジェノサイドの声音にのせられた。
『元は同じもの、今は他人に等しい』
ひとつは闇の底の迷宮にあり。
ひとつはいずこともしれぬ地上にあり。
「ふん」
ギガデリックの細い手が目玉の画面に触れる。どこかを見つめた青年は静穏さを漂わせ、目の前のジェノサイドとは趣の違う空気を持っていた。
「おまえ、思ったよりヒトの悪そうな顔をしてるんだな」
コイツはだいぶ違うみたいだが。
『それって誉め言葉?』
「誰がそんなことを言った。調子に乗るな」
ギガデリックは頬からさらに首筋にのびようとする手を払った。
澱む闇にたゆたう『狭間の人間』の空気。
それは唯一つであり例外はない。
「俺は寝る。邪魔すんな」
『据え膳を食べちゃいけないんだ。狡いなァ』
「言ってろ」
ぼやくジェノサイドの声を無視して、ギガデリックはまた瞼を降ろした。
栗那様遅くなってしまいました;リクエストで「エグギガでもジェノギガでもいい」と仰ってくださったので、ちょっぴりエグゼの話もしつつジェノギガです。栗那さまリクエストありがとうございました~!
一時期は同一人物説派だったんですが、今後はジェノサイドとキラーは根っこは同じでも他人というスタンスで行こうかと思います。時間経過としてはゼファー→ジェノサイド→醜響といった感じ。キラーからジェノサイドはできた(発生した)というmy設定で突っ走ります。