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デニク2 一万ヒットリクエストありがとうSS
リクエスト匿名さま:デニク
※匿名さまのみ、ご自由にお持ち帰りください。
『タトゥー』
「ニ、クス……その腰の、なに?」
「ああ?」
がんがんに冷えるクーラーをかけながら、デュエルの部屋に居座るニクスの腰に変なものを見つけた。ジーンズと下着に隠れつつ、腰骨の近くに黒々と刻まれたトライバル風のタトゥー。それはほんの小さなものだったが、ローライズなものを穿くと見えてしまいそうだ。
「何だ、今まで気づかなかったのか」
「いやっ別にそんなんじゃなくて」
いっぱいいっぱいで見えてませんでしたとは言えない。
このヘタレめ、と視線で言いつつ、ニクスは懐かしそうに「これはな、」と話し始めた。
「パーティーで薬でキメててハイになってた時にやった奴がいれてくれた」
「…………はいぃぃぃ?」
『やんちゃ』をしていたのはデュエルも一緒だがニクスのほうは頽廃の匂いがする。それも、かなり爛れた感じの。そういうあたりではデュエルは潔癖だった。
大方ニクスもそういう予想はしていたようだ。
「……ちなみにそれ、おいくつの話」
「さぁて、ハイスクールに入る前……いや、もっと前か?」
「……」
「あ、そいつおまえよりは長くて巧かったぜ」
「んなこと聞いてねえっ」
「はいはい。……ま、その場で会った奴の中では、ヤッてもいいかなーって程度の好みの奴でさ、トイレで」
指先で穴を作って入れるポーズ。
「そいつが全身入れ墨男。まぁ俺もあの時は若かったし、タトゥー彫りたいって言うからかっこよくしろよって言ってやらせてやった」
「それがコレ?」
腰骨の下、なんてやらしいところに彫らせて。
「しょぼいだろ」
「……入れておいて言うか」
ちなみにデュエルは入れ墨はしていない。格好良さはわからなくもないが、昔の仲間が腕に「寅さん」といれて来た日にはどう接したらいいか半日悩んだくらいだ。
「だから怒ったんだよな。そしたら何て言ったと思うよ?『気に入った奴には全身彫りたいから最初はこれ』なんて言うんだぜ。こっちは白けまくってるのにマジで迫ってくるから股間蹴り潰して逃げてやった」
「……」
「最近はこれはこれでいいだろって思うけどな」
ニクスは自分のジーンズを引っかけてずらす。
「っ!」
「たまに視線が来るんだよな」
ニクスにはそれがけっこう楽しいらしい。銭湯行ってもここじゃあんまり目立たないし。などと嘯く。
「ちょっと前に女がきわどいところにタトゥーいれるのが流行ってたけど、こりゃその先取りだよな。さすが俺って感じ?」
手で覆えば充分みえなくなるタトゥーを白い肌の上で踊らせながらニクスは笑った。一生消えない誰かの痕をつけて。
「ニクス……」
「消せってか?」
「いや、それじゃねえけど」
もごもご口ごもるデュエルにニクスは「もうこんなことしねえよ」と優しく聞こえる声で言った。
「てめえのは消えるけど毎日つけてるから、似たようなもんだろ」
「!!」
デュエルは今度こそ真っ赤になった。こういう、たまにどうしようもなく純情でまっすぐなところをからかうのも楽しいんだよな、とニクスは忍び笑っていた。
匿名さまのご希望にそっているか不安ですがリクエスト・デニクです。遊び人ニクスに振り回されるデュエルで。こいつのことだから、自分も腰骨あたりに彫ってもらってお揃い、とか言いそう?言わないかな?
デニク3 together
「やっぱり降ったじゃねえか」
「うー…」
天気予報を信じなかった。そうしたら雫がアスファルトに跳ね返って白むほどの土砂降りとなっていた。
「…何も、今降らなくてもいいだろぉ…」
珍しく、本当に珍しくニクスの方がその気になってくれていざウチへ、と駅をでようとした矢先だった。
「こういうの、バケツだかタライだかをひっくり返した雨っていうんだよな」
気まぐれなニクスのこと、お気に入りの靴が濡れるとかそういう理不尽極まり無い理由で帰る、と言い出しそうなのに、意外と落ち着いた目で叩きつける雨を見ていた。
「あの、ニクスさん?」
「ああ?」
「か、帰るとか言わないよな」
「帰ってほしいのかよ」
ぶんぶんぶん!と勢いよく否定すれば、ニクスは「走ればすぐだろ」と言い出した。
「今の時期なら濡れてもどってことねえさ」
それはそうなんですけど、アナタは前科があるでしょう。
「いっそ濡れに濡れて…」
「え?」
「風呂に入るか」
togetherという言葉の意味を一瞬忘れた。