LOG

「識柚18」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

識柚18」(2006/07/29 (土) 05:59:11) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

識柚17 姉神3 「もうゆんちゃん!何回押させる気なん!お姉ちゃん手ぇ疲れてまうところやったで!寝てたん?寝てたんならちゃんと電気消さなあかんて言うてるやろっ」 居間にいた師匠が玄関にいるよー? 勢いよく扉をあけた瞬間、識は固まった。扉の向こうにいたのは、女装したユーズだった。いや違うユーズ女版? マシンガントークをかます唇には品のいい唇とグロスでつやめき、ぱっちりした目にはアイメイク。肩に届く髪は内側に巻いて遊ばせている。 彩葉が愛読している関西お姉様雑誌の表紙にいてもおかしくない感じのユーズがそこにいて、識はカコンと顎をおとす。 「……あら」 けばけばしくない絶妙なアイラインの瞳がしっかりと識を捉えた。 「ややわー!こないな背の高いイケメンとゆんを間違えるなんて!どちら様?ここ、ゆんちゃんのお部屋ですやろ?」 アナタ様こそどちら様ですか。 目を白黒させていたその時、背後から「な、なんでおるねん!」とうわずった声が廊下に響いた。 前門にユーズ、後門にユーズ。 わー俺の前後に師匠がいるよー ひきつってオヤジ丸出しなスウェット姿なユーズが、玄関に立つ関西美女なユーズを指さし叫んだ。 「なにしに来たんや!姉ちゃん!」 「なにしに来たも何も電話聞いてへんのゆんちゃん!」 「ゆんちゃんはやめぇ言うてるやろ!」 「ええのよゆんちゃんはゆんちゃんで!お姉ちゃん、留守番電話にちゃーんとメッセージ入れたんやで!」 ずかずか玄関に入りこんだ彼女は識を通り過ぎユーズの前に立ちはだかる。その際玄関に脱ぎ捨てられたヒールの高い靴を見て識はほとんど意識が飛んだ頭でこれ何センチ?などと計っていた。 「さっき聞いたんや!」 「んも!大事なことはすーぐ後回しにするんやから!ゆんちゃんの悪いくせやで!高校受験の時も届け出出すの前日まで忘れてたやろ!」 「ていうか姉ちゃん人前じゃ!」 ……ああ、関西の人って素で漫才ができるってホントだったよシーサー…… 左右に並んだ男ユーズと女ユーズ。まさしく双子のようにそっくりだった。ついでに言うと背はほんの少しだけ男ユーズが勝ってるようだが、気迫負けしている。 「そやったわゆんちゃん!この人誰?うち好みのイケメンさんやんか!紹介して!」 「人妻のくせに何抜かすんじゃコラ!旦那に言いつけるで!」 「ややわ!旦那がそないなこと気にするわけないやんか~もっちろんイケメンはんには悪いけどうちと旦那はラブラブやし、やっぱり一番のイケメンはうちの旦那やもん~」 「誰も聞いてへん!」 ひとづま!? コンマ何秒かでバッと女ユーズの左手を見たら、燦然とダイヤの指輪が薬指で輝いていた。 一通り漫才が終わったかと言うあたりで、男ユーズはぐいっと頭を下げさせ女ユーズが識に挨拶していた。 「識君いいはりますんやね?いつもゆんちゃんがお世話になってます。うち、ゆんちゃんの姉です」 彼女はそのダイヤに負けないほどの笑顔で微笑み、識は思わず見とれた。姉の腕に屈しながらユーズが「あかんっあかん識、姉ちゃんの笑顔に騙されたらあかん……!」と必死に目で訴えていたのだが、悲しいかな弟子にその心が通じることはなかった…… 神の姉、きたる。
識柚18 姉神4 師匠に姉、師匠に姉…というか家族がいたのか。弟子失格みたいなことを識は考えたが、ユーズが進んで家族のことを話すシーンが、そういえばなかった。 「相変わらずきっちゃない部屋やねえ」 「男の一人暮らしなんやから当たり前や」 「残念やわあ、お姉ちゃんゆんちゃんの彼女がいて鉢合わせしてもたらどないしょって思ってたんやで」 玄関先の騒動から数分後、ユーズの姉はすっかりその場になじんでいた。肉親の強さとでも言うべきなんだろうか。 「鉢合わせしたんが識君でよかったわあ」 「はあ…」 「識、コーヒーいれてや」 「まっ!ゆんちゃん人様を顎で使たらあかんでしょっ」 「ええねんコイツはわいの下僕なんやから!」 キッチンに立った識は曖昧な苦笑で三人分のコーヒーをいれる準備を始めた。 いや今更下僕扱いされても構いませんがね、愛が、愛が見えないよ師匠… 「あ、姉ちゃんのは専用があるから探してな」 「マグカップですか?」 そんなもんあったっけ?と首を傾げると、「……めっちゃ目立つのが棚の一番奥にある」と沈んだ声が飛ぶ。 あけてみると収納率の低い食器棚に不自然なくらい詰め込まれた箇所を見つけた。もしかして…とより分けてみると、あった。 『LOVEゆんちゃん』 あったよ。デカデカ描かれたマグカップが。陶器の上品なボディにがっつりと。 不自然に隠すのも姉以外誰にも使えないのも、わかる気がした。 「あ!ゆんちゃんまだ持っててくれたんやね!お姉ちゃん嬉しいわぁ、懐かしいわーそれゆんちゃんのお土産にうちが書いたんですねん~よう書けてるやろ?」 「…捨てたら呪われそうやし」 「なんか言うたゆんちゃん」 姉弟漫才がまたも始まりそうな中、識はもう乾いた笑いしかできなかった。 「せやけど識君みたいなイケメンが弟子やなんて、ゆんちゃん相変わらずオトコにばっかり!もてるんやねえ!」 ぶっ!! ぶほ!! 姉上様の爆弾発言にユーズは再度むせ、識は危うく粉コーヒー瓶(プレミアムブレンドお徳用詰め替えパック)を落としかけた。 「な、な…」 「今もこないちっこいけど、ほんまに小さい頃から、ゆんちゃんが大きゅうなったらお嫁さんにしたるって近所の男の子らに言われてたんよね~」 「そ、それは姉ちゃんとおかんが女の服ばっかり着せ…っ」 反論しかけたユーズがはっと動きを止めた。 キッチンで識が耳をダンボにしていたのである。 師匠の隠された過去が聞けそう?

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: