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識柚14 まわるまわる 「まわるーまーわるーでしかいがーまわるぅー、はきーけとずつうのくりかえーしー、きょーはーはかずーにねれるわいーもーふつかよいでむかえざーけーやー」 下手な替え歌にため息が漏れた。 「…ヘタクソ」 「やっかまし」 識の膝枕を頭に受けておいてユーズは文句ばかり言う。 「膝枕て男の儚いロマンやったんやな。固いし首痛い」 「…俺はやってほしいですよ」 「他当たれ」 そして四回ばかり同じ替え歌を呟いてユーズの意識は消えた。 珍しく酔いつぶれたユーズの頭を撫でながら、頭から離れなくなった替え歌に悩まされる識だった。
識柚15 姉神1 ※この話ではユーズに姉がいるという前提。 「この馬鹿、こないなとこでサカるな」 「いいじゃないですか、ちょっとくらい」 「ちょっとで済んだことあるかこの、っ」 それは平和で師弟にとっては日常的な夜のこと。 「この、下半身バカっ」 「その立派な下半身に泣かされてるのは誰ですかね」 至って欲望に忠実な識は逃げる腰を捕まえようとし、ユーズは諦め悪くあちこちに手をかけながら後ずさる。 それもまあ、いつものことといえばいつものことで。 「あっ」 ユーズがラックに重心をかけたら、FAXを乗せた宅電を乗せたそれはぐらついた。 「あ、それの支柱ネジが緩んで」 「だっ、あ!」 ガタ! 緩んでいますよと言う前にラックが派手に崩壊した。支柱から崩れたラックの書類ケースが散乱し、タイガースステッカーが散らばる。一番上の電話機も、子機が吹っ飛び本体がひっくり返ってしまっていた。 「……」 「……」 ヤる気も縮み込む。 どう見たってスケベ心を起こした識が悪い。 「し、きィ?」 「うわわ、すいませんって!」 「このクソアホへたれ早漏弟子!電話機壊れたらどないするねんっ」 「師匠、さすがにそれは傷つく…」 電話機以下の扱いに悲哀するべきか早漏扱いを嘆くべきか。すっかり腰の力が抜けた識は電話機をとりあえずひっくり返した。 その拍子に指先がどこかのボタンを押したとしてもしょうがなかっただろう。 ピッ! 「?」 「あ、短小識今度はなにした」 「あんたのよりはデカイでしょっ知りませんよっ」 『録音ハ、一件デス』 どうやら留守電の再生ボタンだったらしい。 『一件目、七月三日、午後六時三十八分、デス…』 「げ、一週間前じゃないですか」 「急ぎやったら携帯にくるやろ」 「聞いてもなかったんですか」 冷蔵庫からビールを取りに行ってユーズはからから言う。正論だがズボラなことに代わりはない。 だが発信音の後に平和が破られることになるとはこの時、師弟は気づきようもなかった。 ピー… 『あ!もしもしゆんちゃん?お姉ちゃんやけど元気してるの!』 ブバッ 「ぅわ汚なっ!」 「うげぼへあっ」 綺麗なハイトーンが響いた途端ユーズが缶ビールを吹いた。 『ちょっとくらいは連絡せなママが心配してたで親不孝モン!東京でゆんちゃんの落書きが売れるて信じられへんわーお姉ちゃんあんたが心配やからそっち行くわ!泊めてな!来週な、ほなねゆんちゃん愛してるで!アイラビュ!』

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