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識柚13 アラビアンパロ2
ああ見えてユーズはやっぱり猫の性を持つ魔物であり、好物も自然そちらよりのものが多い。
「それじゃあ買い出しリストはこれで全部ですね」
「んー」
大所帯のキャラバンである。食料をはじめとした生活必需品のリストの束はどっさりとある。
見落としはないかと目を走らせる中リストの末尾に付け加えられた文字に識はわざとらしく難色を示す。
「…さすがに生魚は無理ですよ」
「わいが書いたんやない」
どう見てもつんとすませてみせる頭領の文字だ。
「ナマモノなんざ持ちも味も悪くなるのくらいわかってるでしょ」
「うっさい、たまに食いたくなる性分なんや。おまえにはわからんやろうがな」
「わかりませんねえ、残念ながら」
リストを書き換えながら腹心はさらりと言った。
「生魚は無理ですけど、小魚の干物くらいならなんとかなるかもしれませんよ?」
ぴこ、と耳と尻尾がたまらず反応したのを見逃さずにさらに言い繋いでみる。
「買ってきましょうか?」
「…言わんでもわかれ」
「畏まりました」
識は今度こそ笑みを隠さなかった。
識柚14 まわるまわる
「まわるーまーわるーでしかいがーまわるぅー、はきーけとずつうのくりかえーしー、きょーはーはかずーにねれるわいーもーふつかよいでむかえざーけーやー」
下手な替え歌にため息が漏れた。
「…ヘタクソ」
「やっかまし」
識の膝枕を頭に受けておいてユーズは文句ばかり言う。
「膝枕て男の儚いロマンやったんやな。固いし首痛い」
「…俺はやってほしいですよ」
「他当たれ」
そして四回ばかり同じ替え歌を呟いてユーズの意識は消えた。
珍しく酔いつぶれたユーズの頭を撫でながら、頭から離れなくなった替え歌に悩まされる識だった。