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ケイクジャ7 【闇の中探していたのは】
不幸を不幸と気づかないのが真の不幸のように。
闇を闇と気づかないのは闇に囚われた証。
冷え切った孤独の中で藻掻いて藻掻いて。
掴みとったものを今手にしている。
「ケイナってさぁ」
深夜に目覚めると腕の中の生き物を抱きしめる。
「夜になると子供返りしてない?」
腕の中の笑顔に報復の意味を込めてキスをする。
「ほらムキになってる」
見透かされているのを必死に隠す。
闇の中探していたものの名前を呟いて。
同じ温度で愛していると囁いた。
ケイクジャ8 【病める猫はうたう】
「調子いいじゃん」
「そーでもない」
一戦終えてぷかぷか喫煙コーナーに踏みこむと、戦果を見ていたらしいニクスが特に面白そうでもない顔でケイナを迎えた。
「つまんねー顔」
「ご挨拶やなぁ。ニクスはご機嫌ななめ?」
類は友を呼ぶ。並んでいても、特にこれといった接点もないように見えるニクスとケイナだが、己の深淵で流れる何かの源流が近しいと本能的に悟っている。本人達だけの認識だが。
「前よりつまんねー顔」
「はは。俺は毎日この顔よ?」
同類だからといって傷を見せ合うような仲ではない。類友というより同族嫌悪。似たところを見つめすぎて他がわからなくなる。
だからケイナとニクスは仲が悪いと思われない程度に、そしてお互いが反発しない距離を保っている。それが自分たちにとって最良の選択だとわかっている。
「べったりくっついて、俺ら幸せですって顔してら」
「実際そうだし」
「はっ、言ってろ」
「そちらさんは?儲かってまっか」
そら言めいたわざとらしい問いかけ。
「どうでもいいだろ」
そこはぼちぼちでんなーと返せや。
「……長続き、すればいいな」
「続くわ。続かせる。俺が」
「そりゃ見物だな」
同類項でそして共犯者、あるいは理解者にして永遠の平行線。どこまで行っても交わらないねじれの位置。
「ほな」
「ああ」
軽く手をあげて喫煙スペースから離れた。ニクスはうまくもなくまずくもなさそうな顔で吸い殻を押し込む。
ケイナ、と愛しい声が呼んでいる。