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「QMA4」(2006/07/26 (水) 18:44:59) の最新版変更点
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QMA妄想3
「あーおもっくそ遠慮なく叩きおってっ」
ガルーダの竹刀の一撃は重い上に痛かった。タイガの二の腕にはくっきり竹刀の太い痕が赤くなって残っていた。
「でもゲットできた俺は超ラッキーやなっ」
タイガの指は真っ白く大きな羽根をつまんでニンマリ笑った。言うまでもなくそれは、ガルーダからぬけ落ちた羽根である。
「うはぁ、これだけでもエライきもちえぇなー」
誰にも言ったことはないがタイガはガルーダのあのもふっとした羽根に触れてみたくてしょうがない。ふわふわとしたガルーダはそこらの羽毛布団なんかよりさわり心地抜群に違いない。
「今はこんだけで、ガマンガマン」
大きく竹刀をふりかぶった瞬間、白く大きなものが目の前をよぎりタイガは思わず手をのばし、生徒の予想しない動きで竹刀はタイガの二の腕にぶちあたったのだ。
…羽根一枚と痣一つがつりあうか謎だが。
「いつかおもっくそさわったろ!」
「うぅっ!?」
ぶわっとガルーダの体がひとまわり大きく膨らんだ。
「どうなされたのじゃ」
「…いや、なんだか妙な寒気が…」
「季節の変わり目だからかの。体調管理は怠らぬほうがよろしいな」
「鍛錬が足りないのか…マラソンでもしてこよう」
羽根を片手にタイガのふわふわにかける新たな熱意が沸き上がる頃、丈夫で健康そのものなガルーダが突然の悪寒に襲われたのをロマノフだけが目撃していた。
思わずロマノフすらも触りたくなるような、羽毛の広がりだったとか…
QMA妄想4 レオン&タイガ【モノクロの温もり】
「くそ…っ!」
がつっと壁に拳を叩きこむ。
学院の石造りの壁は古くとも特殊な魔法がかけられているので爆破魔法をかけられてもびくともしないのだと聞いたことがある。
年に一度学内全員が掃除にかかっても剥がれ落ちることのない時の匂いが染みついているように、壁は堅牢だ。
人気のない鐘楼への階段の踊り場。そこは、レオンの隠れ家のような場所だ。滅多にないが落ち込むことがあったりすると、自分を見つめなおすためにここへやってきて時を過ごす。
今日はいつもと少し違う。
「くそ……」
拳が真っ赤になるまで痛めつけてからずるずる壁に座り込む。
今日は本当に散々で、最悪だった。
事の起こりは一学年上の先輩魔法使いとの授業だった。その日レオンはいつになく調子が悪く、振り分けられた課題の半分もこなすことができなかった。だがそれはレオンだけには留まらず、組の半分程度は完璧に仕上げることはできない難度の高いものだった。
悪戦苦闘する下級生を尻目に上級生は次々と課題をこなしていく。そんな中、提出し終えた先輩のひとりがレオンにすれ違いざまに言ったのだ。
『息子がそんな様じゃ、元大賢者様も悲しいだろうなあ?』
かっとなった。
親の七光りだとか、二代目魔法使いだとかで今更傷ついたわけじゃない。その先輩格が、わざわざ「元大賢者」と言い放ったところに怒りが湧いた。行方不明だからといってまだ父は大賢者の位を剥奪されたわけではない。
つまりは……死を揶揄されてレオンの堪忍袋の緒が切れた。後先考えず先輩格と喧嘩になり、担当教師に怒られた。
「あー俺って馬鹿……」
挑発だとわかっていても、父親が絡むと目の前が真っ赤になる。直情的なのは悪いことではないが度が過ぎれば良くないのだと身を以て知っているはずなのに。
自己嫌悪にどんより沈んでいると下からゆっくり昇ってくる音が聞こえた。
「よお、レオンやんか」
「……タイガ?」
「なんやおまえもここに来てるんか」
派手にセットした髪がふわふわそよぐ、アカデミーの制服がこれでもかというくらい似合わず、私服を通す学院内でも目立つ存在タイガは、聞き慣れないイントネーションでレオンに笑いかけた。
「おまえもって……」
「こないなくらーい階段には用はない。せやけど鐘楼はええ風が吹いてるからな」
あくまで通りすがりや、とタイガは言う。その目にレオンの拳も荒んだ壁の血痕も映しているのに。
それどころか、激高した昼下がりの授業も見ていた。
「もうすぐ消灯やぞ。早う寝や」
レオンの傍を通り過ぎ、鐘楼へと昇っていく。
「おまえはいいのかよ」
「医務室行ったほうがええんちゃう。時間かかるやろ」
その時間を考えれば早めに動いとけ、と言いたいらしい。
「俺はなーんも知らん。興味もないわ」
誰が誰の二代目だとか何だとか。
「要は俺に倒されるだけの実力があるかどうかや」
「……」
不敵な物言いをしたタイガは好戦的な眼差しそのままにレオンを見下ろす。
「こんくらいで根をあげるんなら、おまえにはその価値がないっちゅうことやな」
ほな、おやすみ。
こつんこつんと鐘楼への石階段はレオンから遠ざかる足音を伝えて消えた。
熱血レオンの暗部とタイガ。無駄にかっこいい気もする。