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「ゼファ6」(2006/07/26 (水) 17:18:53) の最新版変更点
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ゼファー4
(これ以降のXepherは改名済み)
「キラーはルルのことを守ってくれる?」
「もちろん」
そのためだけに自分はいるのだとは言わない。
まどろみに落ちかけたルルススの肩に布をかける。顔にかかる緑の髪をすくってやると彼女はくすぐったそうにほほえむ。
「リヒトは?」
「…ルル」
「キラーはリヒトを守ってくれないの?」
彼には守る義務はない。リヒトはルルススや今もって朋友がつれているあの少女とは違う。
キラーが守るべきは目の前の少女だけだ。
だが。
「…守ろう。おまえが大切に思うものすべてを」
「…よかった」
額におかれたキラーの手にルルススはすっと頬を寄せた。
守ってねとつぶやく少女は半分は眠りの国に向かっている。
「…みんな大好きだから、キラー…守ってくれる?」
「ああ」
おまえが好きだと思うもの、おまえに連なる近しいもの。
自分自身の命すら投げ出していいと考えていた頃とは違う。
ルルススが守れと望むのならば、守ろう。誰にも望まれなかった、キラー自身でも。
「みんな、守ってやる」
無垢な主はその汚れない微笑みを残したまま眠りについた。
「僕を守ってくれるんだ?」
「…ルルススがそう望むなら」
銀髪をひっぱられ、視界に花の化身めいた薄紅が占める。
「守護者というよりキラーは過保護な従者みたい」
そういうところ嫌いじゃないけど、とリヒトはキラーを捕まえたまま続ける。
「キラーがそうしたいって言ってくれたらもっと嬉しいんだけどね」
リヒトは守護される側ではないのだと思ったことはこの際言わないでおこうとキラーは沈黙のうちに決めた。
ゼファー6 雪
「ここは雪が降るんだね」
「実際には雪じゃない」
「わかってるよ。寒くないものね」
以前『雨』を見ていたのはルルススだったが、今度は『雪』をリヒトは興味深そうに眺めている。
重力に素直に従って降る光を『雨』と名づけることはできるが、薄紅の髪をしどけなく垂らしながら同じ色の瞳が見つめる先の光は、ふわりと重みを持たないように静かに落ちている。それは本物の雪のように積もることはなく、地表に接すれば消えてしまう。
淡雪の儚さに似た光を、ここでは『雪』と呼んでいる。
「閉じられた空間に生きる者のための、せめてもの慰めみたいだ」
時計台に繋がれた存在、すなわちルルススのために。
「いっそ花が降ってこないかな? あの子も喜ぶだろうに」
無邪気を装って笑うリヒトはキラーから見れば、そんな現象に対する感傷的なイメージを持つことを嘲笑しているようにも見えた。
「見てごらんよキラー」
青い眼が自分に向くことを確信した上で誘うようにリヒトが腕をさしのべて『雪』を捕らえる。
細く枝のように伸びた指の上で『雪』は淡く、融けるように消える。
「冷たくも、あたたかくもない」
「……おまえみたいだ」
熱を持たないのに、保ちつづける輝きが似ていると、その時なにげなくキラーは思えた。
「似てる?」
「……何となくだ」
「そんな嫌そうに言わなくていいじゃない」
「何か言うと茶化すのはおまえのほうだ」
再び『雪』を捕らえたリヒトがふっと息をふきかけた。吐息に流されるまま『雪』はキラーへとかかる。
「こんなに綺麗なものじゃない。似ているなら、むしろ君のほうじゃない? キラー」
淡雪の向こうで笑むリヒトが近づく。
熱くもなく、凍えてもいない。
やはりリヒトのほうが似ていると、『雪』に触れていた指がキラーに届いた時に漠然と考えた。