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エレシロ4 【「……におう」】 士朗がぐっと寄せた眉根を白々と見あげた。 「片づけ、兄貴がしろよ」 「…おまえもやれよ」 「俺はいいの」 ごろっとソファに寝転がって、雑誌をめくる。写真の綺麗な撮り方、撮られ方。むしろ汚いものを美しいと思わせる撮り方がしたいね。そのほうが生きているものの匂いを感じる。 「なんで」 「昨日の晩は俺がやったし。今日は兄貴」 兄弟で家賃も折半、ならお互い家事も当番なり役割振ったほうがいいだろ? 最初それでいいって言ったのをもう忘れてるなコイツは。 「ほっとくとハエがわくから生ゴミ早いとこ処理しろよ」 「…ゴミの日は」 「月水金」 引っ越したところのゴミ収集日くらい覚えろ。どうせこれから住み続けるんなら。 三角コーナーの水を切り始めた兄貴は頻りに臭い臭いと言う。 指と指で囲ったファインダーにげんなりした顔を収めながら、俺は自業自得だろと言った。
エレシロ5 花冷え 「さみぃな……」 春には薄紅で埋まった道をとぼとぼと歩く。街灯はうらさびしく足下を照らし、時折かさりと木の葉を右へ左へ翻弄する風が闇の向こうへ連れ去る。 二人で済むアパートへはここが一番の近道だ。春には桜並木になる様をエレキはまだ見たことがない。ただ、不動産から話を聞いている時に士朗が風情があっていい、と言ったのを覚えていた。 候補はいくつかあったものの、結局そこに落ち着くことになったが、移り住んだのが夏だったので士朗だってまだその桜並木を拝んだことはない。 「もうちょっと計画性もてよな……」 どうせ士朗は実家に植わっていた桜の樹が懐かしいんだろう。士朗が生まれた年の記念樹として、今も木枯らしに耐えていることだろう染井吉野は毎年数は少ないものの美しい花弁をつけていた。 ちなみに数年後にはエレキの誕生による記念樹も植えられたのだが、そちらは梅だった。 どちらの樹も実家の庭でじっと春を待っていることだろう。 春になったら。 この並木を歩くのも悪くないだろうけれど。 「一度くらいは戻るのも悪くねえんじゃねぇの?」 誰に言うでもなく呟いて、エレキはまた歩き出した。

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