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「ダークエッジ6」(2006/07/26 (水) 06:02:51) の最新版変更点
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ダークエッジ妄想4 吉白3 ほむら
「なぁ、こういうところに閉じこめられて寂しくないわけ」
暗く狭い、墓所のさらに奥まった闇。
たぶんあの霊安室めいた墓に押しこめられたら、高城九郎は泣きわめくこともできずに失神するだろう。
太陽を浴びることのない白右はそこで夜の訪れを待っている。
吉国は、日没の過ぎた校舎で白右の出現を待っている。いまだ開かれぬ白い墓所の扉の前に座り込み、煙草を指先でこする。小さな火が灯り、バニラの匂いが漂う。赤坂からもらう煙草はいつもこんなだ。
「寂しいとか悲しいとか、そういう感情を持っていた記憶はある。だがそれに翻弄されている時間は終わった」
「じゃあ、全然今は感情がないってことか」
「そうでもない」
王としては弱い肉体。最愛の妹の裏切り。白右を動かす原動力のひとつには紛れもない感情が胸に残っている。
「怒り、だろう」
「……あんた、それで怒ってんの」
声があまりにも平坦すぎて冗談かと吉国は笑った。
「吉国は、知らないか」
「なにをだ」
「感情というものは頂点に達すると、落ち着くんだ。炎は温度の低い赤い火では揺らぐが、千度に達すると炎は真っ白になる」
「あー…怒りすぎて頭がプッツンした、みたいな?」
「おまえの言葉では、そうなるのかもな」
その言葉からすると、白右は怒り続けている。吉国の足りない言葉に補足をつける穏やかな声の中にも、今現在の状況に憤怒していることになる。
「そうだよな、なんかこう、スコーンと突き抜けちまうと妙に冷静になっちまうもんな」
火を見た時の自分の反応でも思い返しているのかも知れない。冷静というよりは吉国は陶然としているが、思考はむしろクリアなのだろう。
一人うんうんと納得しているらしい吉国の声を遠くで聞きながら白右は己の中の憤怒を思う。
白く、真っ白な炎が他の感情を食いつぶして燃えあがるならばそれもいい。一度は吹き消されてしまった炎が、すべてを焼き尽くす劫火の火種であったことを思い出させることができるなら、これほどの復讐はない。
吉国が制御しきれず揺らぐ赤い炎ならば、白右は名にその色を冠する白炎になろう。
すべてを壊すために。
「そういうの、冷静にマジギレするっていうんだ」
「そうか」
墓所の扉が、開く。劫火の宴への始まりを知らしめすように。
ダークエッジ妄想6 吉白4 燃やせと呼ぶ声が
燃やせ。燃やせ。燃やせ。燃やせ。
いつの間にか昼になっていた。確か校門に滑り込んだのはきちんと朝だった筈なのに。
いつものように授業が進み、なにげなく昼が来ていた。
「吉国、あんた寝過ぎ」
「寝不足なの?吉国君」
「どーもしねー……」
最近つるむようになった赤坂と清水がそろって、そお?という顔をしながら弁当片手に教室を出て行く。
「吉国」
ふっと目の前を過ぎる黒。
「っ!」
思わず後退った。
「え、どうしたんだ?」
ほんのり刻まれた笑み。
ブレザーの中にあって、学ランは異様。それなのに、教室の中に溶け込んでいる。
高城九郎。
「西脇が飯食わないかって」
「……俺いいわ。煙草吸ってくる」
食欲ねえし、と言い訳を口の中でしながら教室を出た。
いつもの教室。いつもの昼。いつもの壁。いつもの異状。
燃やせ。燃やせ。燃やせ。燃やせ。
いつからか聞こえる心の声は、今まで対峙していた人物とにた響きを持つ声の主にすり替わっていた。
「でも同じじゃねえんだよな……」
似ていることは、同じことではない。
高城九郎が高城九郎であるように。
「遠山」
燃やせ。燃やせ。燃やせ。燃やせ。
おまえの声が聞こえる。