たけとみ7 酒宴の場には蜘蛛の巣が張られている。繊細な綱渡りを一匹一匹の蜘蛛たちがなし、ひとたび足運びを間違えれば一瞬にして食われる側に転落だ。宴は楽しむものではない。単なる駆け引きだ。 「浮かない顔だな」 「元々、こういう顔だよ」 一献注ぐ前に秀吉は特大の杯を空にする。巌の酒量は計り知れない。 「宴に人はいらぬもの」 ひとつの杯 ひとつの月 「それだけで足りる」 秀吉の眼差しには、おまえはそれでは不足なのだろうと語っている。