ある艦長の憂鬱


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彼女は溜め息を吐いた。
無機質な部屋には、彼女一人だけしか存在しない。
今の溜め息も誰かに聞かれる心配はないだろう。
突然通信機のアラームが響く。彼女は眉をひそめながら通話ボタンを押し、訊ねた。
「どうした?」
部下の緊張した声が響く。
「報告いたします。地球連合軍の月基地を攻撃していた部隊からの連絡が途絶えました。
 おそらく全滅したものと思われます…」
彼女は形のよい唇を歪めた。「例のブシンオーとやらか?」
部下は曖昧に否定した。「いえ、どうやら別の機体のようです」
「そうか…。よし、ただちに生存者の確認と敵機の分析を開始しろ」
返事を待たずに通信機を切り、彼女は目を閉じ、天を仰いだ。

彼女の所属する異世界軍――複数の星系、種族からなる連合体――が地球圏に侵攻したのは
二週間程前であった。ふと思い出す。開戦前に諜報部の連中はなんと言っていた?
地球の科学技術は我が方よりも数世紀遅れております。地球連合軍などは
速やかに駆逐できるでしょう。…まったく、あの無能な豚共め。
現在、彼女を悩ませているのはその地球連合軍の兵器、奴らがスーパーロボットなどと
称している人型の機動兵器群だった。
未知のテクノロジー、無尽のエネルギー、我が軍のメカを簡単に破壊する圧倒的なパワー。
その厄介なスーパーロボット共のおかげで、各戦線は劣勢を強いられている。
さらに我が軍は一枚岩ではない。このままでは各種族の対立が表面化しかねない。
女王陛下の威光もあまねく宇宙を照らす、と言う訳にはいかないのだ。

しかし…と彼女は首を振る。悩んでいるヒマなど無い。おそらくは数日中にも
大規模な攻勢計画が発案されるだろう。彼女の艦隊も参加せねばなるまい。
彼女は愛すべき艦と部下を想いながら、艦橋へと歩き出した。